欧州はエネ高騰で戦時経済に
Japan In-depth / 2022年9月24日 7時0分
村上直久(時事総研客員研究員、学術博士/東京外国語大学)
【まとめ】
・ロシアのウクライナ侵攻が誘発した、エネルギー価格の高騰とエネルギー供給不足への懸念が欧州経済を直撃しており、戦時経済体制を誘発している。
・一般消費者を保護し、一部企業の巨額の偶発的利益の一部を吐き出させ、「公平感」の醸成を目指す事実上の戦時経済体制への移行が必要だと考えている。
・プーチン大統領はガスの供給不足でウクライナへの欧州の支援は弱まるだろうとみている節があるが、米ブリンケン国務長官は「エネルギーを武器化」していると批判している。
ロシアのウクライナ侵攻が誘発した、エネルギー価格の高騰とエネルギー供給不足への懸念が欧州経済を直撃している。欧州はグローバルな経済ショックの中心であえいでいる。こうした中で、欧州連合(EU)とEU加盟国政府は、一般家庭に助成金を支給するなど支援策を講じたり、巨額の偶発的利益を手にしたエネルギー企業から一定の利益を徴収するなど、事実上の”戦時経済体制”を取り始めている。
◇ガス価格は8倍に
欧州では化石燃料のうちロシアへの依存度がウクライナ戦争前に40%に達していた天然ガスの価格高騰が目立ち、同戦争が始まってから8倍となり、ロシアの国有独占国有ガス企業ガスプロムがバルト海経由でドイツに達する「ノルドストリーム1」パイプラインによるガス供給を9月初めに停止したことから今冬の暖房用需要期を控えて供給不安が強まっている。
エネルギー危機は欧州では産業競争力、市民の生活水準、社会的安定にとって数十年に一度の脅威となっている。こうした中で政策担当者らは今年の冬に深刻なエネルギー供給不足となれば工場閉鎖や計画停電,エネルギーの配給などを実施する計画を立てている。
エネルギー危機は既に欧州の経済成長の大幅減速につながっており、ドイツなど一部EU諸国では年末までにリセッション(景気後退)入りする懸念もささやかれている。
EU欧州委員会は平時にはエネルギー価格は市場原理に基づいて決められるべきとの立場を取っているが、ウクライナ戦争が続く現在のような戦時においては、一般消費者を保護するとともに、一部企業の巨額の偶発的利益の一部を吐き出させることによる「公平感」の醸成を目指すことによる事実上の戦時経済体制への移行が必要だと考えている。
欧州委はまた、ロシア産ガス価格の上限設定を検討したり、エネルギー使用量の削減を義務付けるなどエネルギー市場への介入も企てている。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
オーストリア、「補償請求」によりロシアからガス供給断たれる
Record China / 2024年11月18日 18時50分
-
ロシア、オーストリア向けガスを転売 供給停止受け
ロイター / 2024年11月18日 9時24分
-
トランプ再選で「ドイツ経済悪化」3つのリスク 1期目より2期目のほうがリスクが大きい理由
東洋経済オンライン / 2024年11月14日 8時40分
-
米国民がトランプを選んだ以上、貿易相手国は対米依存を脱却するしかない
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 13時20分
-
欧州首脳、ウクライナ支援継続呼びかけ 次期米政権にメッセージ
ロイター / 2024年11月8日 3時30分
ランキング
-
1生稲晃子氏の靖国参拝報道、共同通信が訂正し謝罪…韓国の「佐渡島の金山」追悼式典参加見送りに影響か
読売新聞 / 2024年11月25日 21時46分
-
2<独自>ビザなし訪日客に事前審査、不法滞在者〝居座り〟防ぐ 補正予算案で調査費計上へ
産経ニュース / 2024年11月25日 21時34分
-
3「今さらカネが原因とは考えにくい」楽天・マー君“電撃退団”のなぜ…移籍で「神の子」復活はあるのか?
集英社オンライン / 2024年11月25日 17時20分
-
4能登地震で不明の男性か 土砂崩れ現場で「人のようなもの」発見 石川・輪島市
日テレNEWS NNN / 2024年11月25日 20時18分
-
5「クマ駆除要請の拒否を認める」北海道猟友会 全道71支部に通知
HTB北海道ニュース / 2024年11月25日 18時31分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください