マレーシア総選挙 思惑入り乱れ
Japan In-depth / 2022年9月26日 23時0分
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・マレーシア総選挙時期めぐり、政治的思惑入り乱れる。下院解散時期の選択肢は3つとの見方が支配的。
・連立の動き、首相の党内順位、実力者の汚職や前首相への恩赦獲得の動き、有権者年齢引き下げなど、不確定要素が多数影響。
・イスマイル首相はインド人貧困学生支援で延命図るが、与党トップ5による予算決定会合は延期に。政治的圧力を示唆。
マレーシアでは、国王が任期5年の下院議員の定数222の内、誰が過半数支持を得るかについて判断し、首相として任命する。
総選挙で雌雄を決する形で決着がつけば問題ないが、総選挙なしに誕生したムヒディン前首相、イスマイル・サブリ・ヤーコブ現首相の場合には、複雑な連立の動きがあり、国王の判断に基づいた。現在の下院議員の任期は2023年7月16日まで。連邦下院、州議会の総選挙とも小選挙区制のため、選挙区の与野党や各党派内、連立相手の調整なども活発となる。その結果、自然解散前の解散時期を巡って思惑が入り乱れることになる。
写真)エリザベス2世女王死去を受け、弔意の記帳をするイスマイル・サブリ・ヤーコブ首相(2022年9月15日 クアラルンプール)
出典)Photo by Annice Lyn/Getty Images
通常、11月下旬―1月のマレー半島東海岸側のモンスーン時期、1月末の中国正月、イスラム教徒の断食期間(2023年は3月23日から約1か月間の4月末まで)、6月末のハリラヤ・ハジ(犠牲祭)の時期は総選挙実施に適さないと見られている。
また、政府は10月7日に2023年予算案を提出し、1か月程度内に可決をしたいとしている。
このため、自然解散前の総選挙の可能性は、11月のモンスーン入り前(同国気象庁は昨年のモンスーン入りは11月21日としている)、来年2月-3月の断食入り前、5月―6月のハリラヤ・ハジ前までの三つしかない、との見方が支配的だ。
事態をさらに複雑にしているのは、議会の解散権をもつイスマイル首相は、母体の統一マレー国民組織(UMNO)では、ザヒド・ハミディ総裁、モハマド・ハッサン副総裁に次ぐ副総裁補でナンバー3に過ぎないこと。しかも、ザヒド・ハミディ総裁、モハマド・ハッサン副総裁は、政府系ファンドである1MDBの45億ドルともいわれる不正資金流出事件で禁固12年の実刑判決を受け収監されたナジブ・ラザク元首相と同様、汚職問題で訴追されている。ザヒド・ハミディ総裁のビザ・システム受注を巡る汚職容疑に関しては、マレーシア高裁が9月23日、無罪を宣告したが、他の汚職案件でも起訴されている。現地紙は、「今回の無罪判決で、ザヒド・ハミディ総裁が次期総選挙に立候補することは可能」との法律家の見方を伝える一方、「まだ別の汚職案件があるので、立候補は無理」といった見方も示している。
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