日米防衛関係は泥沼か アメリカ側に告げる(上)
Japan In-depth / 2022年10月1日 23時3分
そのうえに、日本は安全保障の曖昧な原則として「専守防衛」という基本方針を掲げていますが、こんな方針は世界の他のどの国にもありません。
同盟の基礎となる日米安全保障条約をみても、きわめて異端です。この条約の第5条は日本の施政権下にある領域に対する武力攻撃があったときのみ、日米共同で共通の防衛のために行動を起こすと規定しています。
ということは、アメリカ軍部隊が日本の領海のほんの1キロ外で、たとえ日本の防衛のために行動している際に武力攻撃を受けても、日本側はそのアメリカ軍部隊を守る責務はなにもないのです。
★ 相互性を欠く唯一の同盟
アメリカにとっては日米同盟は他の諸国との同盟にくらべて唯一、相互性を顕著に欠く軍事同盟なのです。この日米同盟とは対照的にアメリカの韓国との安全保障条約は韓国がアメリカの部隊が西太平洋のどの地域でも攻撃を受けた場合にはそのアメリカ軍を助けて共同防衛行動に出ることを規定しています。
この点を指摘すると、みなさんのなかには日本が2015年に制定した平和安全法制を想起する方がいるかもしれません。この平和安保法制は日本としては初めて自衛隊に日本の領土領海の外でも武力行使を許すことを規定していました。
しかしながらその前提条件として「日本の存立が脅かされる場合に同盟国を守ることができる」とされていました。この前提条件を満たすための手続きは実際の有事に日本がタイムリーにその領土領海の外で集団的自衛権を行使させることを事実上、不可能に近くしているのです。
★ 相違を乗り越えたのか
しかしながら日米両国はこのような相違や断層にもかかわらず、長い期間、努力を重ねて、堅固な同盟と効果的な抑止力を構築したといえます。だがそれでも問題がなお残っているのです。そして日米同盟の真の強さが本当に試されたことはまだありません。
なお残る諸問題の氷山の一角を示すために、私自身の体験を報告させてください。
私がもう何十年も前に日米防衛関係の研究に初めて本格的に取り組んだとき、日米両国間の核兵器に関する課題に関して大きな虚構があることを知り、落胆したのです。当時、私はカーネギー国際平和財団の上級研究員として日米防衛関係についての調査や研究をしていました。その過程で元日本駐在のアメリカ大使で、ハーバード大学の教授のポストから引退したばかりのエドウィン・ライシャワー氏にインタビューしたのです。
私の日米二国間の安全保障問題に関する一連の質問に対してライシャワー氏は、核兵器を搭載したアメリカ海軍艦艇が長年にわたり、日本の領海を航行し、日本の港に寄港していることを明らかにしました。その間、日本政府は日本側の非核3原則が存在するため、そのような事態は決して起きていないと、一貫して言明してきたにもかかわらず、ということでした。
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