南シナ海などで米比合同軍事演習開始
Japan In-depth / 2022年10月6日 11時44分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・フィリピン海兵隊と米海兵隊による共同軍事演習が10月3日から始まる。
・マルコス政権は領土問題が重要問題であると国民、そして国際社会に印象付けている。
・マルコス大統領の施政方針は、米中一方に偏らず均等に付き合うというもので、東南アジア流のしたたかさが滲み出ている。
フィリピン海兵隊と米海兵隊による共同軍事演習が10月3日から始まり、フィリピン西部に広がる南シナ海や台湾との間にあるルソン海峡の沿岸であるバタネス州などで各種作戦の演習を行う。この演習には日本の自衛隊員と韓国の兵士も初めてオブザーバーとして参加している。
「カマンダグ6」と名付けられた共同演習にはフィリピン海兵隊員630人、米海兵隊員2550人が参加しており、10月14日まで続けられる。
この演習は南シナ海に面した島や台湾との間のルソン海峡沿岸で実施されることからもわかる通り、一方的な海洋権益を主張して島嶼や環礁を埋め立てて軍事拠点を建設し続けている中国を意識したものであり、同時に台湾と中国の緊張状態を見据えた演習となっている。
米比両軍の海兵隊部隊が主に参加する演習であることから中国が一方的に不法占拠を続け、フィリピンやマレーシア、ベトナム、ブルネイなどと領有権争いが生じている南シナ海の島嶼や環礁への上陸作戦も念頭にしているとみられている。
■ 南シナ海の現状とマルコス政権
今回の軍事演習「カマンダグ6」は6月30日に就任したフェルディナンド・マルコス新大統領のもとでは最大規模の軍事演習となり、マルコス政権が南シナ海問題を極めて重視していることの表れといえる。
マルコス大統領は選挙キャンペーン中から「領土問題では1ミリも妥協しない」との強い姿勢を示しており、中国に対して強硬姿勢と融和政策の間で揺れ動いたドゥテルテ前政権と異なりマルコス政権下では領土問題が重要課題であることを国民そして国際社会に印象付けている。
ドゥテルテ前政権の末期、2021年11月16日にはフィリピンが船を座礁させてそこに比海兵隊員が駐屯する形で実行支配を続けている南シナ海のアユンギン礁に向かう兵士の食糧や生活物資を積んだ民間の船舶2隻がアユンギン礁に近づこうとするのを中国の海警局船舶3隻が妨害する事件が起きた。
アユンギン礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にある環礁だが、中国海警局船舶はEEZ内も自由に航行して国際ルールを無視している。
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