南シナ海などで米比合同軍事演習開始
Japan In-depth / 2022年10月6日 11時44分
昨年11月の事件では海警局船舶が放水銃による放水を比船舶に浴びせ、進路妨害をするなどした。このため危険を感じた比船舶は物資を積載したままマニラに戻っている。
こうした「主権侵害」に対して当時のドゥテルテ政権のテオドロ・ロクシン外相は「中国はこの海域で自国の法を執行する権利はなく、今回の行為は違法である。中国によるこうした自制心の欠如はフィリピンとの二国間関係を脅かすものだ」と厳しい態度で中国に抗議した。
しかし中国側は「フィリピンの船舶2隻が中国の同意を得ず南沙諸島に侵入した。これに対し中国は主権と海洋秩序を守るため法に基づいて公務を執行した」と反論、一方的な主張を繰り返した。
ドゥテルテ前大統領は比外務省による抗議以上の強硬策は控え、経済に依存する中国への配慮を示した。
その後南シナ海では中国海警局船舶や海軍艦艇、空軍航空機の活動は台湾海峡の緊張にともない、台湾海峡や台湾周辺での「示威行動」が増え、比較的平穏な状況が続いている。
こうした状況も10月16日から北京で始まる中国共産党大会で習近平国家主席の3期目となる続投が決まるか、新執行部の顔ぶれがどうなるかが最大の焦点とされ、共産党大会を前に対外的な摩擦や挑発を控えているのではないかとみられている。
■ マルコス政権の対中政策
▲写真 大統領選のキャンペーン中に演説するフェルディナンド・マルコス・ジュニア(愛称ボンボン)大統領。2022年2月19日 出典:Photo by Ezra Acayan/Getty Images
マルコス新大統領はこのように南シナ海問題、領土問題に関しては中国に一歩も譲る姿勢をみせておらず、国民からの支持も大きい。しかし中国からの多額の経済援助や投資などを完全に無視することは自国経済の運営を困難にする可能性もあり、経済問題での中国依存政策は続くものとみられている。
マルコス大統領は就任前の大統領戦での当選が確実になった時点で習近平国家主席と電話会談しており、「両国関係のギアをさらに上げて実りある結果を模索する」と述べ、習近平国家主席も「中国は周辺国との外交において常にフィリピンを優先的に位置付けており、経済や社会の発展に積極的な支持と援助を行う」とフィリピンへの変わらない援助を約束したという。
さらに7月6日にはフィリピンを訪問した中国の王毅外相と会談し、「両国関係の黄金時代を築きたい」と王毅外相は述べ、今後も経済面を中心に関係強化の方針を明らかにした。
そして対立が続く南シナ海問題で王毅外相は「対話を強化して適切に処理したい」と対話路線を強調するに留まった。
こうした中国の関係を維持しつつ、安全保障分野では米国やその同盟国との関係を強化するというマルコス大統領の施政方針は、一方に偏らず均等に付き合い、その中で経済支援や軍事支援など「もらえるものは何でも、どこからでももらう」という東南アジア流のしたたかさが滲み出ている。
それだけに今後も米中によるフィリピンへの「ラブコール」が続くものとみられている。
トップ写真 「カマンタグ6」オープニングセレモニーに出席する米、フィリピン、韓国、日本の各代表(2022年10月5日Fort Bonifacio, Philippines) 出典:III MEF Marines
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