インドのIT関連サービス業界動向、米国IT不況予測の指標に
Japan In-depth / 2022年10月7日 12時11分
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・インドの大手IT企業で、新規の学卒採用取消やボーナスなど変動給の削減といった動きが目立ってきている。
・インドのシリコンバレーの情勢が、米国のIT不況をいち早く示す指標になった。
・欧米企業のIT予算削減傾向に対し、インドIT企業は変動給の削減、採用ペースの緩和といった対応措置を講じている。
インドの大手IT企業で、新規の学卒採用取消やボーナスなど変動給の削減といった動きが目立ってきている。業界2番手のインフォシス、ウィプロ、テック・マヒンドラは採用を3-4か月間延期していたが、ついに採用中止メール送付が報道された。業界トップのタタ・コンサルタンシ―・サービシーズ(TCS)はボーナスなど変動給支払いを延期し、インフォシスはその70%削減を実施したとされる。
南部の高原都市ベンガルールは別名「インドのシリコンバレー」と呼ばれるほどで、米国やカナダ、英国、EU(欧州連合)、日本などのソフトウエア開発のコーディングなど下流工程だけでなく、設計など上流工程も担い、コロナ禍でも好調だった。
ところが、インド最大の求人プラットフォームであるノークリ・ジョブスピーク(Naukri JobSpeak)によると、2022年8月のIT/ソフトウエア部門の求人は前年同月比マイナス10%へと急落した。
米国では、アップルがIT技術者のリクルーター約100人を解雇とブルームバーグが先月報道。メタ・プラットフォームズ(旧フェィスブック)、マイクロソフト、アマゾン、オラクルも同様な措置に踏み切ったとされる。インドのシリコンバレーの情勢が、米国のIT不況をいち早く示す指標になった観がある。
その一方で、インドの優秀なIT技術者の転職は盛んで、今年の転職率は2年前に比べ60%以上増えたと見られ、優秀なIT技術者獲得・保持費用は収益圧迫要因になっているようだ。
直近のインドの主要IT関連サービス各社の業績は収益悪化が目立つ。TCSの2023年度第1四半期(2022年4-6月、注:インドの場合2023年度と表記)の営業利益率は前年度同期比2.4%減となった。TCSは従業員総数が60万6000人強の巨大企業だ。インフォシスの2023年度第1四半期の営業利益率も前年度同期の20%増から3.6%増へと減少し、同社は変動給削減に動いた。ウィプロの2023年度第1四半期のIT関連サービス部門の営業利益率も前年度同期の約19%増から15%増へと落ち込んだ。ウィプロも変動費削減などに努めている。
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