沖縄知事選結果分析③ 政策ビジョンの貧しさと人材難
Japan In-depth / 2022年10月7日 18時0分
<大型施設志向の経済界>
経済界は、大型プロジェクト志向が強い。その典型は、2015年開業のイオンモール沖縄ライカムと、2019年オープンのパルコシティ沖縄だ。どちらも4000台の駐車スペースを持つ。また、見本市会場を中心とした統合観光施設MICE(マイス)、テーマパークの建設構想もある。小さな島には不釣り合いだが、県民の多くも大型施設を好む。
▲写真 イオンモール沖縄ライカムの内観 出典:筆者提供
戦後27年間米国に支配された沖縄は、鉄道が建設されず、車社会になった。そのため、大型施設中心の米国型都市計画が定着し、沖縄の風景を彩っていた小さな商店は姿を消していった。このトレンドは非正規雇用を生み出す要因にもなったが、その問題点を指摘する人は少ない。
<安全保障の議論が成立しない背景>
今回の知事選で、安全保障の議論はなかった。基地問題は安全保障の問題でもあるのだが、安全保障を語りにくい、沖縄独特の社会風土がある。
この問題には、沖縄の近現代史、東アジア情勢と日米同盟の在り方が複雑にからむ。ここで詳細を述べることはできないが、少しだけポイントを挙げておこう。
まず指摘したいことは、多くの県民にとって「戦争」とは沖縄戦だ、という現実である。
3か月に及ぶ沖縄戦で県民の全人口の4分の1が亡くなったが、島であるために逃げ道がなかった本島南東部は、修羅場になった。本土決戦を遅らせるために沖縄は捨て石になった、と多くの県民は考える。
さらに、戦後27年間にわたって沖縄を占領し統治した米国は、米軍基地を次々と建設する。その一方で、米国統治機関は、冷酷に人権を抑圧した。その結果、今も沖縄に存在し続ける米軍基地は、沖縄戦と米軍による占領の象徴になったのだ。
本土復帰から50年を経て、不条理な時代を体験した世代は高齢化し、その記憶は徐々に薄れつつあるように見える。だが、沖縄社会が共有した悲劇的な体験の記憶は、「戦争に巻き込まれてはならない」という思いに転化し、県民の心に深く根を下ろした。
一般県民が絶対平和主義を支持するのは、当然かもしれない。しかし、学者や有識者まで「巻き込まれ論」を強調するのは問題だ。そのような発想は、戦争の原因とその背景の考察につながらないからだ。「台湾有事に巻き込まれたら大変だ」と県民の恐怖心を煽るのではなく、どうすれば中国に台湾への武力進攻を諦めさせることができるか、を論じるべきだろう。
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