ウクライナで再び核戦争の深淵を覗くか キューバ危機の教訓生かし破局防げ
Japan In-depth / 2022年10月14日 12時22分
バイデン大統領は、プーチン大統領の発言を単なる威嚇、冗談ではないと楽観を戒めているが、確固たる根拠があるのか。ペンタゴンは、ロシアが暴発する兆候はないとしているが、確実な情報に基づいてのことか。
60年前の危機当時、アメリカがカリブ海の島国にミサイルが配備されている事実を察知したのは偵察機からの写真撮影によってだった。
スパイ衛星などの技術が格段に進歩し、それに対する依存度が高まっている現在、一歩誤って不正確な情報がもたらされれば、たちまち破滅的な結末に結びつく。
米国は、ウクライナ戦争における交戦国ではないが、もはや〝第3次世界大戦〟といわれる中で、ウクライナに大量、巨額の武器支援を行っていることを考えれば、〝準交戦国〟というべきだろう。
不正確な情報は、自国を〝敗北〟に導くだけでなく、世界に破局をもたらす。
■プーチンの顔たて、後に法廷で裁く
60年前、フルシチョフの譲歩でキューバ危機が収束した後、ケネディ大統領は、ソ連に屈辱を与えるような言動を避けたというという。
侮辱されるような言動を浴びると、譲歩したくてもできず、したとしても2度と繰り返さないことは人として当然だろう。
プーチンに対してそんな気遣いは無用かもしれないが、これ以上の犠牲をださないためにも、何らかの穏便な形で当面の戦闘を収拾させられないかという主張が一部にある。
この際、プーチンの政治生命を絶ち、ロシアの影響力を阻喪させるべきとの主張には心情的には大いに賛同できるが、プーチンの顔を立てる現実的な手段も検討すべきかもしれない。
プーチンの蛮行、戦争犯罪は絶対に許すことはできず、国際政治の舞台にとどめておくことはもちろん許されない。プーチンの顔を立てて戦闘停止をした場合でも、その罪が阻止されることは許されず、後でじっくり戦争犯罪法廷で裁くべきだろう。
キューバ危機においてはケネディ大統領とフルシチョフ首相との間で頻繁に書簡のやり取りが交わされ、外交ルートでの対話も維持されていた。
今回のウクライナ戦争において、米露間の接触がどの程度、維持されているのか。対話が欠如すれば、相手の出方を占う材料を失う。
マクナマラ回想、ロバート・ケネディ回想はウクライナ戦争の議論の基礎となりうる重要な示唆に富んでいるというべきだろう。
【キューバ危機】1962年10月、キューバにソ連がミサイル基地を建設していることを米の偵察機が発見。ケネディ政権は撤去を迫ったが、ソ連のフルシチョフ首相は拒否、一触即発の緊迫した状況となった。
米国はキューバに向かう船舶を臨検、キューバへの攻撃論が勢いを得てきたところで、ソ連が撤退に応じ、土壇場で危機は回避された。
米政権が事態を把握した10月16日からソ連が撤退に応じた28日までの13日間を「キューバ危機」と呼び、映画、テレビドラマ、著作などでいまなお、しばしば取りあげられている。
トップ写真:ウクライナ軍がロシアから奪還した領土の現状(ウクライナ・ハリコフ州クピエンスク、2022年10月13日) 出典:Photo by Carl Court/Getty Images
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