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円楽死すとも落語は死せず(下)娯楽と不謹慎の線引きについて その2

Japan In-depth / 2022年10月20日 18時0分

師弟関係も素晴らしかった。先代=五代目が体調不良で引退を決意した際、当時は三遊亭楽太郎を名乗っていた師匠を自宅に呼び、兄弟子を差し置いて、


「芸の進歩もめざましいし、人をまとめる力もある。後は頼んだ」


と言って襲名を許したそうだ。また楽太郎当時の弟子の中には、今やタレントとして大活躍中の伊集院光もいる。三遊亭楽大を名乗っていた。


彼は落語の道では落伍者となってしまったのだが、六代目円楽を継いでからも、「俺のことを尊敬している間は、俺の弟子だと公言してかまわないよ」と言ってもらえていた。後に、二人で落語会を開いたこともあるが、その際、伊集院は取材陣のカメラに向かって、「この顔、撮らないでください。うれしすぎてニヤニヤがとまらない」などと言っていた。そこでボケるのが芸人じゃないのかよ、といったツッコミも忘れるほどのよい笑顔で、見ている方まで頬がゆるんだ。


『笑点』ではメンバー、スタッフの結束を固めようと、毎度差し入れを持ってきたのも有名な話だ。お笑いコンビ・サンドウィッチマンの二人も『笑点』初出演の際、「おいしいあんパンと温かいアドバイスをいただきました」と語って、六代目円楽師匠を悼んでいた。今や当代の人気者と呼べる二人だが、お笑い芸人さんにとって『笑点』初出演というのは、かなりのプレッシャーになるらしい。


番組では、司会者や他のメンバーを平気で罵倒する「腹黒キャラ」であったが、実際には師匠のことを悪く言う人はまずいなかった。


そのような六代目円楽師匠だっただけに、後任選びは難航しているらしい。


前回、林家三平師匠が評価を得られず降板に至ったことが、後継者選びにも影を落として射ると述べたのは、話がここにつながってくる。レギュラー=大喜利メンバーの中でも随一の人気者であっただけに、その席に座るのは並大抵でないプレッシャーになるらしい。


10月19日の段階で、未だ正式発表はなく、幾人かの名前が取り沙汰されているだけだが、女性噺家として初めて大喜利に出演した蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)師匠は注目に値する。


春風亭小朝師匠の弟子で、昇進前は「春風亭ぴっかり☆」を名乗って、若手大喜利には幾度か出演歴があった。「大人AKB」のオーデシションで最終選考に残ったこともあるそうで、師匠たちからも


「うまい、かわいい、華がある」


の三拍子揃った逸材だと評価されているそうだ。


もちろん、このような評価が聞かれること自体、落語界が未だ男性社会であることの証左ではあるが、そこをなんとか実力で切り抜けたら、噺家を志す女の子が増えたり、落語人気が女性の間に広まってゆくことも期待できるのではないだろうか。


門閥とか組織の論理とか言っていないで、日本独特の話芸である落語を、一致団結して盛り上げたい。これこそ六代目円楽師匠が終生訴え続けたことであった。


その遺志を継ぎたいというのであれば、そろそろ男女の壁も取り払ってもよいのではあるまいか。女湯の壁はまた別問題なので、これについては項を改める。


(その1はこちら)


トップ図:日本テレビ「笑点」 出典:日本テレビ「笑点」公式facebookページ


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