米欧、ウクライナ防空を強化
Japan In-depth / 2022年10月21日 23時55分
村上直久(時事総研客員研究員、学術博士/東京外国語大学)
【まとめ】
・米国とNATOはウクライナの防空態勢強化に向けた支援を強化。
・ドイツや英国、ノルウェーなど西欧15カ国は、近距離および中長距離の射程を持つ防空システムの共同調達目指す。
・また、ウクライナ兵の訓練をEU内で開始する意向で、人的、物的の両側面で支援を強めている。
米国と大半が欧州連合(EU)に属する欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国はロシアによるミサイルや自爆型ドローンを使った攻撃に対してウクライナの防空態勢強化に向けた支援を強化している。欧州諸国はまた、自国領内でのウクライナ兵の軍事訓練も拡大する。
■ロシア・ミサイルを50%超撃墜
2月に始まったロシアのウクライナへの軍事侵攻に対して、8月に入りウクライナの反転軍事攻勢が目立つようになった。ウクライナは北東部の戦略的要衝であるハルキウ州を奪還した。この背景には米国がウクライナに高性能ロケット砲ハイマースを多数供与したことなどがある。ロシアのプーチン政権は9月末、予備役の最大30万人に上る招集による大増派とドネツク州など東部・南部4州の西側が「茶番劇」と非難する住民投票に基づく一方的併合を宣言した。
その後、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ唯一の橋を爆破され、ロシアはウクライナ側の仕業だと反発。ロシアは報復措置としてキーウなどウクライナの20都市に長距離ミサイルを撃ち込み、ドローンによる爆撃を行った。
欧米各国はロシアの報復措置を非難するとともにウクライナの防空態勢の強化の必要性を改めてて認識した。
NATOのストルテンベルグ事務総長は10月中旬にブリュッセルで開かれたNATO国防相会議後の記者会見で、「ウクライナ支援をさらに強化する」と明言。同国の住民と重要インフラの防衛に向け、近く数百台のドローン妨害機を提供する考えを示した。
ロシアはクリミア橋の破壊に対する報復措置として、10月10日から数日間、ウクライナに大規模なミサイル・ドローン攻撃を実施したが、ウクライナ軍によるミサイル撃墜率は50%を超えた模様だ。これは、西側の支援による、ロケット発射を探知する早期空中警戒システムと地上の対空防衛システムの連携プレーが機能しているためだとされる。
ロシアはその後、在庫が減少したせいか大型高性能ミサイルの発射を控え、自爆型ドローン攻撃に重点を移し、ウクライナのエネルギー関連施設や各種インフラをターゲットにしている。これらのドローンはイラン製とみられ、ウクライナや欧州諸国はイランを非難している。
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