党大会で「反習派」を抑え込んだ習主席
Japan In-depth / 2022年10月24日 16時39分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・今後5年間、習主席を中心とした体制が継続し、中国は過去数十年のエリートによる権力分立の後、独裁へ逆戻りしつつある。
・政権移行という予測が外れた理由は二つ。一つ目は、軍の動向の解釈を誤っていたから。
・二つ目は、党大会での主席団メンバー構成で投票の行方を判断していたが、「反習派」は結束できなかったから。
今年(2022年)10月22日、中国共産党第20回全国代表大会が終了した。そして、翌23日、これからの5年、第20期の習近平総書記を中心とする新しい最高指導部(政治局常務委員)がお目見えしている。
李強(新)・趙楽際(留任)・王滬寧(留任)・蔡奇(新)・丁薛祥(新)・李希(新)である。習主席が、常務委員を忠実な部下で固めたことで、中国は過去数十年のエリートによる権力分立の後、独裁へ逆戻りしつつある(a)と言えよう。
実は、大会直前の同月13日、突然「北京四通橋横断幕事件」(b)が起きた。事件を起こした彭載舟(本名、彭立発)に代表されるような中国人民の民意・願い(<横断幕の仮訳>PCR検査は不要で、食べる事が必要だ。ロックダウンは不要で、自由が必要だ。嘘は不要で、尊厳が必要だ。「文革」は不要で、「改革」が必要だ。指導者は不要で、選挙が必要だ。奴隷にならず、公民になろう。独裁者の国賊、習近平を罷免せよ!)とは異なり、李克強総書記誕生は叶わなかった。
同時に、我々の予想(一つは、軍事力による「クーデター」的な政権移行。もう一つは、選挙による平和的な政権移行)もはずれた。なぜ我々は予測を誤ったのか。たぶん、2つの事実の“解釈”を間違えていたと思われる。
第1に、我々は軍の動向を誤って“解釈”していたのではないだろうか。
既報の通り、9月8日深夜、北部戦区司令官、李橋銘(「改革・開放」を支持)は、習主席への軍権譲渡を拒否し、瀋陽軍区で内戦が勃発した。当日、習主席は李橋銘を更迭し、同戦区司令官に王強を任命(c)している。
しかし、同月21日、李橋銘は北京で開催された軍事セミナーに出席した。その後、李橋銘は、軍事委員会によって陸軍司令官(昇格人事)に任じられている(d)。
他方、近頃、林向陽が軍事委員会から東部戦区司令官に任命された(e)。林向陽は、昨年8月、東部戦区司令官から中部戦区司令官へ異動になった。4ヶ月後、林向陽は習主席によって中部戦区司令官を解任された。林向陽は、東部戦区へ戻って来たが、すでに同区司令官ポストは埋まっていた。その後、林向陽は干された状態だったのである。
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