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陰謀説の危険 最終回 「ネオコン」もユダヤ陰謀説の産物

Japan In-depth / 2022年10月28日 1時32分

陰謀説の危険 最終回 「ネオコン」もユダヤ陰謀説の産物


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)


「古森義久の内外透視」





 


【まとめ】


・ネオコンという言葉は、ネオ・コンサーバティブの略語で、現状の打開を目指す知識人や政治家を指す中立的な言葉である。


・その言葉が、反ユダヤ主義において否定的な文脈で使われているという指摘がある。


・反ユダヤ主義に反撃する団体「反中傷連盟」の総会でも、ユダヤ系タカ派高官がネオコンと呼ばれるのは根拠ない偏見によるものと批判されている。


 


私には、ユダヤ人有志がユダヤ陰謀説など反ユダヤ主義に反撃する団体の総会に出て、そこで展開される議論をじっくりと聞いた体験がある。


アメリカのユダヤ系の人たちが中傷や差別に対する自衛を目的に結成したアメリカでも最大級のユダヤ系組織「反中傷連盟」である。その全米指導者会議に参加の機会を得たのだった。2003年4月のことだった。


その場で改めて確認したのは、その後の日本でも流行した「ネオコン」という言葉がユダヤ人側からは反ユダヤの偏見のにじむ不正確な用語とみられていることだった。ネオコンとは本来はネオ・コンサーバティブ=新保守派という意味である。


反中傷連盟は1913年にアメリカで設立されたユダヤ系米人中心の組織である。設立の目的はユダヤに対する迫害や中傷、差別と平和的な手段で戦うことだとされていた。本部はニューヨーク、支部は全米各地やイスラエル、ロシアなどに計30を有し、アメリカだけでなく国際的にも主要ユダヤ組織として重視されてきた。


その反中傷連盟の創設90周年を記念する全米指導者会議が2003年4月27日から29日までワシントンで盛大に開かれた。同会議は講演や討論が主体でブッシュ政権のロデリック・ペイジ教育長官、クリントン政権のCIA(中央情報局)長官のジム・ウールジー氏ら非ユダヤ系の有識者の基調講演などがあった。その他の講演、発表でもユダヤ系の人たちが多く、そのなかで「ネオコン」という言葉は一貫して否定的に取りあげられたのだった。


 ネオ・コンサーバティブという言葉は1970年代に民主党陣営の一部で自陣営の軟弱な対外政策に失望し、反共と軍事の重視という現実的政策を唱えた知識人や政治家を指して生まれた用語だった。


その時点ではそれなりに客観的な意味があった。しかしその後に意味が大きくゆがめられたというのだ。本来のネオコンという言葉が生まれて30年近くが過ぎて、その略称だけが中味を変えて、新たな造語のように使われ始めたという。2001年のアメリカ中枢への同時多発テロ以降のことだった。


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