佐川文彦誠励会前理事長の功績
Japan In-depth / 2022年11月5日 13時39分
その後、誠励会が中心となって、大勢の内部被曝検査が実施された。そして、その結果は、早野教授や坪倉医師がリードして、学術研究として発表された。一連の研究は福島県民を安心させ、風評被害の緩和に貢献するとともに、貴重な記録として、世界中の専門家が注目した。
例えば、2013年に『日本学士院紀要』に発表された研究だ。誠励会グループを中心とした研究チームは、地域住民3万2811人の内部被曝を検査し、内部被曝レベルが当初、推定されていたよりも遙かに低いことを示した。
また、原発事故直後、内部被曝が確認された小児たちも、2012年秋には300㏃/kg以下に低下していたことを明らかにした。福島の内部被曝の程度が軽度であることを示した初期の研究の一つである。
2014年6月に米『プロス・ワン』誌に発表した食事と内部被曝の研究も、関係者から高い評価を受けた。研究チームは、内部被曝検査を実施した3万622人の住民のうち、50㏃/kg以上のセシウム137を検出した9人を対象に食事内容をヒアリングした。この9人は、野生のキノコを収集したり、自宅の丸太で栽培したものを食べていた。早野教授や坪倉医師たちが中心となって、放射線検査を受けていない食品や、きのこ・山菜・野生生物などの肉などの出荷制限のある地場産品の摂取を控えるように呼びかけたところ、介入から数か月後の再検査で、すべての住民で、内部被曝が著しく減少したことが明らかとなった。食事指導が内部被曝対策に有効であることを実証したことになる。
このような研究の価値は高い。一人一人の住民を測定し、陽性者には食事や生活を指導した結果だからだ。研究者が、机上でシミュレーションしたものではない。
早野教授や坪倉医師たちが、このような論文を発表できたのは、彼らを支える「プロデューサーとサポーター」がいたからだ。それが佐川前理事長が率いる誠励会だった。内部被曝検査、地域への案内、受診者の当日の誘導、検査の記録・整理、結果説明の手配など、さまざまな業務をこなした。地元行政との調整も彼らの仕事だった。スタッフが一丸となって、仕事ができたのは、「皆が故郷を愛し、佐川理事長を信頼していたから(誠励会職員)」だ。そのことは住民も知っており、地元で出会った60代の女性は「誠励会のおかげで、この地で内部被曝検査はもちろん、医療や介護を受けることができる」と言った。
このようなチームは一朝一夕ではできない。様々な試練を乗り越え、時間をかけて、構築されていく。このようなチームは地域にとっての財産だ。新型コロナウイルス(以下、コロナ)への対応でも、誠励会は獅子奮迅の活躍をした。
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