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佐川文彦誠励会前理事長の功績

Japan In-depth / 2022年11月5日 13時39分

例えば、コロナワクチン接種の支援だ。mRNAワクチンという、新しいプラットフォームを用いたため、集団接種開始当初、専門家を含め、多くの国民がコロナワクチンへの安全性・有効性に懸念を抱いていた。厚労省は、海外の大規模治験の結果を参考に、迅速承認したため、日本人を対象とした情報が不足していた。日本人のデータ収集が喫緊の課題であった。この問題の解決をリードしたのが、誠励会だった。いくつかの臨床研究を発表している。これも坪倉医師と誠励会などの共同研究だ。


まずは、昨年11月に発表した平田村、相馬市、南相馬市の住民2500人を対象とした抗体価の研究だ。彼らの調査によれば、感染や重症化予防の目安となる中和活性は、2回接種終了から60日未満の人は365であるのに対し、150日以上が経過した人は99へと減少していた。感染予防の目安は100だ。抗体価の減衰には個人差があったが、一般的に高齢になるほど低下しやすかった。以上の事実は、高齢者への接種の必要性を支持した。


この研究は、当時、国内で実施された同種のものでは最大規模で、説得力があった。多くのマスコミも報じ、我が国のコロナ対策に大きな影響を与えた。


今年8月に発表した小児を対象としたワクチン接種の副反応調査も意義あるものだった。彼らは、ワクチン2回接種を終えた、石川郡在住の5〜11歳の小児806人のうち、アンケート調査に協力した421人を対象に、副反応の実態を調査した。多くの小児が接種部位の腫脹・痛みを訴えたものの、発熱や倦怠感などの全身性の副反応を訴えたのは、接種者の12%以下で、入院を要した小児はいなかった。接種者の大半が何らかの副反応を訴える成人とは対照的な結果だった。ワクチン接種に不安を抱く小児・保護者にとっては有り難い情報だった。


もちろん、小児へのワクチン接種に問題がなかった訳ではない。彼らの調査では、花粉症を有する小児162人のうち、36人(22%)で、接種後にその症状が悪化したと回答している。この結果は、調査時期が花粉症のシーズンと重なったためのバイアスなのか、コロナワクチンが小児のアレルギー性疾患を悪化させる可能性があるのかはわからない。ただ、花粉症を有する小児に接種する際には、医師と相談するなど、慎重な対応が必要と言っていいだろう。この辺りも、石川郡のようなお互いの顔が見える地域コミュニティでは柔軟な対応が可能だ。


これが佐川氏が作り上げた地域医療だ。被曝からコロナ対策まで、地域を支えた。そして、彼らの試行錯誤が、国内外に大きな影響を与えた。私は、このような地域コミュニティで仕事をさせていただいたことに感謝したい。今後、佐川氏が育てた後継者たちが、このコミュニティを引き継ぐだろう。佐川氏の冥福を祈りたい。


トップ写真:誠励会と地元の東邦銀行のコロナ感染対策連携を発表する記者会見にて、右端が坪倉医師、三人目が佐川文彦理事長 出典:筆者提供


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