フランスの根深い人種差別問題
Japan In-depth / 2022年11月8日 7時0分
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・議会で人種差別やじが飛び、発言した右派政党所属議員が処分を受けた。
・フランスでは移民だけでなく、フランス生まれでも肌の色を理由に差別発言に苦しめられることが多い。
・模範を示すべき議会での差別発言は「フランスの価値観の共有」の意味が再認識される重要な機会になった。
フランス下院に当たる国民議会の審議が行われていた際、黒人議員の発言中に右派議員が「アフリカへ帰れ」とやじを飛ばし大きな波紋を広げている。
やじを飛ばしたのは右派政党・国民連合(RN)のグレゴワール・ドフルナス議員だ。左派政党・不服従のフランス(LFI)のカルロス・マルテン・ビロンゴ議員が、政府に対し、欧州連合(EU)諸国と協力して、地中海で救助されたアフリカからの移民数百人を支援するよう求めていたことに対してのやじだった。
この発言を受け、マクロン大統領も即座に「人種差別発言にショックを受けた」とし、侮辱された議員への支援を表明した。また、ボルヌ首相も「わが国の民主主義に人種差別の居場所はない」と強く批判した。
しかしながら、発言したドフルナス氏は「ビロンゴ氏に対してではなく不法移民に対しての発言だった」と弁明し、当時RNの党首であったマリーヌ・ルペン氏もそのように擁護した。
フランスの国民議会で人種差別的発言
実際のところ、このやじが誰にむけられたのかという点ではあいまいである。フランス語は単数形と複数形が存在するが発音自体は同じだからだ。「アフリカへ帰れ」とやじが飛んだものの、それが個人に対してなのか、複数の人々に対してなのかの判断はできないのだ。
また、やじを飛ばされた側のビロンゴ氏も、これが初めての答弁でもあり緊張していた可能性もあるが、やじを飛ばされた瞬間には自分のことを言われたとは受け取っていない様子だった。どちらかと言えば、その周辺の議員たちが「人種差別発言である」と認識したようにも見える。
残念ながら、このようなことは日常でよくあることだ。筆者も同様なことを何回も経験している。なにか侮辱的表現を投げかけられても、そんな言葉を使って侮辱するという発想がない場合は侮辱だと理解できないが、それを侮辱的表現として使用されている環境で育った人々の間では、その意味は完全に侮辱であると認識するのだ。今回の発言も明らかに大多数が「人種差別発言」と受け止めたのである。
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