比テロ組織10人投降 壊滅に近づく
Japan In-depth / 2022年11月10日 23時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・フィリピンのイスラム教テロ組織「アブサヤフ」のメンバー10人が治安当局に武器持参で投降。
・テロ活動を続ける戦闘員は約130人に激減、組織は壊滅の危機に直面している。
・マルコス大統領はテロとの戦いを継続する姿勢で、本格的な「アブサヤフ」壊滅作戦が進むことが期待されてる。
フィリピンのイスラム教テロ組織である「アブサヤフ」のメンバー10人が治安当局に武器持参で投降し、残存勢力は約130人に減少、掃討作戦を続ける軍は壊滅も近いとしてさらに作戦を強化している。
軍当局者は11月8日、「アブサヤフ」の主な活動拠点であるフィリピン南部でメンバー10人が投降したことを明らかにした。
南部で壊滅作戦を続けている軍によると2022年1月以降、投降して来た「アブサヤフ」の戦闘員メンバーはこれで174人に達し、この数字には戦闘員の後方支援などで協力していた非戦闘員の40人も含まれているという。
軍当局者によると「アブサヤフ」が活動する南部バシラン島、ホロ島などで依然としてロ活動を続ける戦闘員は約130人とみられ、これまでに相当数がすでに戦闘による殺害あるいは投降して勢力は激減し、組織は壊滅の危機に直面しているとみている。
■ 国際的テロ組織に変貌
「アブサヤフ」は1991年にテロ組織「モロ民族解放戦線」から分離した組織でアブドラガク・ジャンジャラーニを指導者として南部スールー諸島のホロ島やバシラン島、南部ミンダナオ島サンボアンガ半島などを主な活動拠点として活動。
1998年にアブドラガク指導者が警察との銃撃戦で死亡した後、「アブサヤフ」は中東のテロ組織「イスラム国」やインドネシアのテロ組織「ジェマ・イスラミア(JI)」と関係を深め、国際テロ組織へと変貌していく。
2014年に戦闘員は約4000人とされた中にはインドネシア人、マレーシア人、シンガポール人が含まれていたという。
こうした国際的なテロ組織に変貌していった背景には「アブサヤフ」の創設者でもあったアブドラガク指導者がシリアやサウジアラビアでイスラム神学を学び、アフガニスタンの「聖戦」にも参加、国際テロ組織「アルカイダ」のウサマ・ビン・ラーディン司令官とも面識があるなどの人脈が引き継がれた結果といわれている。
■ 数々の凶悪テロを実行
2000年以降「アブサヤフ」はテロ事件を本格化、フィリピン政府と米政府からは「テロ組織」に指定されている。2004年にはルソン島マニラ湾コレヒドール島近海でスーパーフェリー船を爆破させて死者・行方不明者116人が犠牲となるテロを実行している。
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