マレーシア アンワル新首相、課題山積
Japan In-depth / 2022年11月27日 0時51分
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・11月24日に下院議員の過半数の信任を得ていたアンワル・イブラヒム元副首相が国王の薦めで首相に任命された。
・政権の安定化、インフレ高進、電子部品の輸出問題などアンワル首相が取り組まなければならない課題が多く残っている。
・対外関係では、対中関係のバランス化を推進しそう。
マレーシアは11月19日の総選挙(連邦議会下院選挙:任期5年、定数222、小選挙区制)で過半数を占める政党がなく政党間の連立工作が続いたが、24日に国王の薦めで連立工作が成就し、野党第一党だった希望連盟党首のアンワル・イブラヒム元副首相が首相の座に就いた。
アンワル氏は、1981年7月からのマハティール政権で教育相、財務相、副首相を務め、1997年のアジア通貨危機時に、自国通貨リンギットを米ドルと連動させるペッグ制を採ったマハティール首相との意見対立で政権から放逐された。
同政権はその後も続き、22年間に及んだが、アンワル氏はイスラム教で禁止されている「男色」や汚職疑惑で投獄された。2018年の総選挙では、マハティール氏は、かつての政権の与党連合の中核勢力だった統一マレー人国民組織(UMNO)に反旗を掲げ、希望連盟を率いて勝利した。
アンワル氏はマハティール氏と和解し、希望連盟から出馬して当選。国王の恩赦により出獄し副首相に就任、マハティール氏から「後任に」との約束を得ていたが、反故にされたという経歴の持ち主。そして、今回、75歳にして悲願であった首相になった。
アンワル首相が取り組まなければならないのは、政権の安定化、国民の生活を脅かすインフレ高進、先進国の経済悪化に伴う半導体など電子部品輸出の状況といった経済問題への対処、ワン・マレーシア開発公社(1MDB)の巨額資金の私的流用で刑が確定し現在収監中のナジブ・ラザク元首相時に進めた中国の「一帯一路」戦略への過度な加担を修正する外交の推進と課題は多い。
マレーシアの憲法では「国王が下院議員の過半数の信任を得ていると判断した議員を首相に任命する」としている。下院選挙後の政党の勢力分布は、人民正義党、民主行動党、国民新任党、キナバル進歩統一組織、マレーシア統一民主同盟の連合組織である希望連盟が82議席、全マレーシア・イスラム党と統一プリブミ党(プリブミは土地の子の意味。マレー人、先住民を指す)の連合組織である国民同盟が73議席。
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