落選の系譜(下)熱くなりきれないワールドカップ その5
Japan In-depth / 2022年11月28日 19時0分
トルシエ監督に話を戻すと、中村をメンバーから外した一方で、それまで起用しなかった中山雅史と秋田豊を招集した。
この大会で攻守にわたって活躍し、ベルギー、ロシアから1ゴールずつ挙げて一躍ヒーローになったのが、当時22歳だった稲本潤一で、彼もトルシエ時代を回想して、
「ゴン(中山)さんと秋田さんが、チームをとにかく盛り上げてくれた」
と感謝の気持ちを述べている。
「エースを11人(試合に)送り出せば必勝の体制になるわけではない」
というのがトルシエ監督の持論で、岡田監督とはまた違った意味でチームの和を重んじていたのである。それで思い出されるのは、岡田監督自身が、前回述べたカズの落選について、2度目の監督就任(2010年南アフリカ大会)の時であったなら、
「試合で使わなくとも、チームの士気を鼓舞するといった役割を期待して、代表に詠んだかも知れない」
と語ったことだ。
これが監督という仕事の難しいところで、才能と実績がある選手でも、自身が思い描く戦術や他の選手との相性を考えると、代表に呼ぶわけには行かない、という場面も出てくる。
そして、そうした選手を外したら、たちどころに囂々たる非難を浴びるのだ。この観点からすれば、若手主体のチーム作りを進めつつ、最終段階でベテランとの融合を実現したトルシエの手腕に、一日の長があったと考えることもできる。
そのトルシエ監督の後、2006年ドイツ大会の指揮を任されたのは、ジーコであった。
セレソン(ブラジル代表)として赫々たる戦歴を残し、日本でも40歳にして鹿島アントラーズのエースとなった世界的ビッグネームである。
ところが、落選という問題とは違うが、チームの内部分裂によって、またしても一次リーグ敗退の憂き目に遭ってしまう。
まずは直前の合宿で、あえてここでは名指ししないが、実力はあるのに試合に出してもらえない(当人たちの主観である。念のため)選手たちが、無断外出した上に乱痴気騒ぎを演じるという事態が起きた。世に言う「キャバクラ7」で、これがマスメディアにすすっぱ抜かれ、当然ながらジーコも協会も、そしてファンも激怒した。
一度は彼らの招集が見送られたが、結局幾人かはドイツに帯同した。しかしながら、汚名返上となる活躍は見せられなかった。チームがチームとして機能しなくなっては、まず勝てない。
今次のカタール大会に際しても、森保監督の人選には批判的な向きが多かった。
とりわけ、大迫勇也、原口元気の二人が落選したことに対しては、元代表まで
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