2022年台湾統一地方選挙の分析
Japan In-depth / 2022年11月29日 23時0分
しかし、新型コロナに関しては、台湾だけの話ではないだろう(世界中、コロナ蔓延時、台湾は一時的にせよ、優れた防疫対策を採っていた)。
第3に、蔡英文総統は県市長候補者を自ら決めていた。だが、党内から、今後、民主主義的な手続きを踏む事が望ましいという声が出ている。これは当然だろう。
第4に、一部の県市は候補者の選定作業が短く、準備期間があまりなかった。民進党は選挙に出遅れたのである。
第5に、民進党中央委員会が明確な目標を定めず、例年とは違って、支持者たちの訴えが足りなかった。「抗中保台というスローガンは後半になってようやく出て来ている。
第6に、台湾に対する中国共産党の脅迫が奏功し、国民党が「民進党に投票すれば両岸が不安定になる」(=「国民党へ投票すれば両岸は平和だ」)と宣伝した。そのため、一部の有権者は国民党に投票したのではないか。
けれども、別の見解(c)が存在する。第1に、米国の中間選挙と同様、台湾の統一地方選挙は、元来、与党に厳しい。第2に、台湾の治安が良くないという見方がある。第3に、民進党の米国へおもねる「台湾空洞化」(TSMC等の米国移転)政策に対し、疑問の声が上がっていた。
蔡英文総統は民進党主席も兼ねていたが、選挙の敗北を受けて、党主席を辞任(d)した(暫定的に、陳其邁・高雄市長が党主席を務めるという)。実は、かつて李遠哲が民進党は腐敗していると喝破した。他方、民進党幹部と黒社会との関係が取り沙汰されているが、蔡総統も黒社会と関わっていると噂されている。
ところで、選挙同夜、中国国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は、民進党が大敗した統一地方選について、「この結果は、平和や安定を求め、良い暮らしをしたいという主流の民意を反映した」という談話を発表(e)した。
この談話は噴飯モノだろう。中国共産党は、先の第20回党大会では、民意(彭載舟が北京四通橋で横断幕を掲げて共産党に抗議)を無視し「習近平総書記3期目続投」を決定した。また、同党は、73年間中国大陸を統治しているが、一度も「普通選挙」を実施した事がない。
〔注〕
(a)『自由時報』「中央選挙委員会:直轄市長選挙の投票率59.86%、県市長選挙の投票率64.20%」(2022年11月27日付)
(https://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews/4136983)
(b)『自由時報』「民進党6つの敗北要因分析 呉思瑤: 痛みから教訓をくみ取り、民意に耳を傾けなければならない」(2022年11月27日付)
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