ユーロ圏、来年物価高緩和へ【2023年を占う!】EU経済
Japan In-depth / 2022年12月3日 11時0分
村上直久(時事総研客員研究員、学術博士/東京外国語大学)
【まとめ】
・エネルギー価格の高騰を主因とするインフレ高進は欧州連合の大半が加盟するユーロ圏を直撃しており、景気が冷え込むと見込まれていた。
・再生可能エネルギーや石炭の利用拡大、LNGの輸入はエネルギー不足分の確保に役に立った。
・冬の到来を控え、ガスの備蓄が進み、ひところの危機感は薄らいでいるが、今後数年間、不確実な状況は続く。
2月24日以来続くロシアによるウクライナへの軍事侵攻が引き起こしたエネルギー価格の高騰を主因とするインフレ高進(物価高)は欧州連合【EU】の大半が加盟するユーロ圏を直撃している。10月のユーロ圏インフレ率は9月の9.9%から加速し、過去最高を更新、10.7%に達した。コロナ禍で停滞した経済活動の本格的再開が押し上げにつながったとみられる。
物価上昇ペースは年内にピークを迎える見込みで欧州中央銀行(ECBは今後一年間の予想インフレ率を7.3%としており、インフレは今後、緩やかに低下する見通しである。
そうした中で、EUの二大経済大国である独仏の間で、エネルギー価格の上限設定構想をめぐって温度差が表面化している。さらに、エネルギー供給確保のためにLNG(液化天然ガス)の輸入や石炭の利用の拡大が進み、地球温暖化防止に向けた温室効果ガスの削減に逆行する形となっている。
◇景気は減速
10月のユーロ圏消費者物価上昇率は、エネルギーを除くと6.9%だった。
ユーロ圏各国では電気・ガス料金と食料品の値上がりが目立ち、市民生活を圧迫している。例えばフランスでは主要食料品のうち多くが一年前に比べて10~30%台の上昇を記録している。
EU欧州委員会は今年のユーロ圏物価上昇率を前年比8.5%、来年を6.1%と予想している。ジェンティロー二欧州委員(経済担当)は記者会見で、「物価上昇ペースが予想より速いが、年内にピークを迎える公算が大きい」と予想。ただ、ロシアのウクライナ侵攻やエネルギー需給の逼迫を踏まえ、「先行きは極めて不透明だ」と強調した。
物価高の中で景気は減速し、ユーロ圏経済はスタグフレーションの様相を呈している。
EU統計局によると、2022年7~9月期のユーロ圏(19カ国)の実質GDP(国内総生産)速報値は季節調整済みで前期比0.2%増となった。6四半期連続のプラス成長となったが、4~6月期の0.8%増からは鈍化した。
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