少しもクールではない「冷笑系」(上) 歳末は「火の用心」 その1
Japan In-depth / 2022年12月8日 11時0分
身分制社会・階級社会がどうのこうのに至っては噴飯もので、前シリーズの最初に述べたことだが、カタールという国は総人口の9割ほどが移民労働者によって占められている。
たとえば大会の大手スポンサーでもあるカタール航空など、経営陣はほぼ全員カタール人で、パイロットは大半がエジプト空軍出身者、そしてCA(客室乗務員)は世界中から美人を集めていると、もっぱらの評判なのである。美人はこの際、どうでもよいが。
舛添流の国際政治学では、このような国も「分業が徹底した身分制社会」にカウントされるのだろうか。
さらに言うなら、今次の大会のために、彼ら移民労働者が多大な犠牲を強いられたことは事実だ。大会に向けて、スタジアムなどインフラの整備が急ピッチで進められたわけだが、灼熱の砂漠気候の中で、重労働に従事させられた労働者の多くが熱中症で倒れ、人権監視団体によれば死者だけで6500人以上だったという。
しかも、たとえ落命しても満足な補償がなされず、賃金の未払い案件も相当な数に上るとの報告があり、こうしたカタール政府による人権侵害をと糾弾する声は各方面から聞超えてくる。英国BBCなど、開会式の中継を拒否したほどだ。スペインやイタリアでも、パブリック・ビューイングが中止された。
いやしくも国際政治学者を名乗って活動するのであれば、こうした問題にする意見を、まずは開陳すべきではなかったか。
とどのつまり私がなにを憂えているのかと言うと、このように、本質的な問題から目をそらしたまま、他人の努力やその結果としての賞賛に、冷笑を向けるような態度を「クールだ=かっこいい」と受け止める風潮が一部にあり、それが子供社会にまで影響を与えている傾向に対してである。
次回、この問題をもう少し見てみたい。
(つづく)
トップ写真:W杯で観客席の掃除をするためのゴミ袋を掲げている日本サポーター(2022年11月27日 カタール、ドーハ) 出典:Photo by Marvin Ibo Guengoer - GES Sportfoto/Getty Images
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