陸自「次期装輪装甲車にAMV」の問題点
Japan In-depth / 2022年12月10日 18時0分
ほぼ同時期にコマツは排ガス規制の強化にあわせて軽機動装甲車の改良型を開発したが、調達単価が3千5百万円から5千万円に高騰し、財務省が難色をしめしたこともあって採用されなかった。このためコマツは事業規模を維持できず、装甲車事業から撤退した。(コマツが装甲車輛から引かざるを得ない理由)
このため防衛省は新たに「次期装輪装甲車」として96式の後継選定を2022年度に開始した。候補は三菱重工がMAV、NTKインターナショナル社AMVを、双日エアロスペースがGDLS(General Dynamics Land Systems)提案した。
MAVはこれとは別の「共通戦術車」に既に採用されている。これは16式機動カナダのLAV6.0 を提案した。だがLAV6.0は2022年度末の納期に試験用車輌が間に合わずに脱落した。
▲写真 GDLSが提案したLAV6.0 出典:防衛省より
このためMAVとAMVの一騎打ちとなったが、防衛省が求める基本性能はAMVが優れ、後方支援・生産基盤については両車同等、経費についてはAMVが優位でAMVを次期装輪装甲車のAPC(Armoured Personnel Carrier:人員輸送型)として選定した。
だが問題がある。AMVは国内でライセンス生産されることになっているが、それは現在パトリア社が調整中ということだ。どこが国内生産するか現段階では不明ということだ。それでいて、後方支援体制や生産基盤について防衛省は判断したことになる。無責任ではないか。
通常、このような場合メーカーが初めから国内パートナーと組んで生産体制も提案する。8日行われた本件のレクチャーで、ライセンス生産先が決まらない、あるいは調達単価が上がるなどの条件を満たさなかった場合、キャンセルもありうると説明していた。
だが既に防衛省は来年度予算で次期装輪装甲車29両分を232億円で要求し、2026年度から配備するとしている。採用がキャンセルされた場合、また時間と費用を掛けて入札と試験を行うことになる。
防衛省の秘密主義も問題だ。防衛省は今回APC型にしか言及していなかった。だが同車は初めからファミリー化を前提としている。筆者の質問に答える形で指揮通信車、施設支援車などの派生型の調達予定があることを述べたが、筆者が質問しなければ明らかにしなかっただろう。
他国では普通基本型となるAPC型含めてどのような派生型を各何輌ずつ調達し、総調達数と予算を明らかにする。だが防衛省、自衛隊は初年度の調達数しか明らかにしない。設備投資の概要すら国会や納税者に説明しないのは民主国家の「軍隊」として不合格だ。
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