軍事力の役割の拡大【2023年を占う!】国際情勢③
Japan In-depth / 2022年12月12日 12時13分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国は習近平政権下、台湾に対して軍事的手段で併合を断行する選択肢を強調するようになった。
・ロシアのプーチン大統領がウクライナの領土の一部を奪取する目的のために軍事力を使った。
・日本は憲法によって戦争や戦力を一方的に禁止しており、軍事の概念と役割を無視している。国難と呼べる危機がひたひたと迫っている。
さて新しい年、2023年の世界ではどんな傾向が顕著となるか。どんな変化が国際情勢を動かすのか。
第3に予測される2023年の国際変動は軍事力の役割の拡大である。
もっとも国際情勢を実際に動かす要因としての軍事力の役割の拡大はここ数年、顕著となってきた。だから厳密には2023年に予測される新たな変動要因と呼ぶことは不正確かもしれない。しかしこれまでの軍事力の役割がさらに大きくなる、という意味では新たな変動といえる。
アメリカとソ連とはイデオロギーの対立に始まって、全面対決となった。
第二次世界大戦の終了後の1945年以降の時代からである。この東西対立では軍事力は中心的な役割を演じたといえよう。アメリカもソ連も相手を何回も壊滅できるほどの巨大な核戦力を保有していた。核では通常戦力でもソ連がいつもやや優位に立つという構図で米ソ対決が続いた。
この危険な軍事対決はアメリカ、ソ連両方の戦力がほぼ均衡し、全面戦争となれば、両大国が壊滅しかねないほど巨大な戦力の相互脅威のために、かえって戦争には踏みきれないという状態でもあった。「恐怖の均衡」とも呼ばれた。核戦力の面では「相互確証破壊」とも表現された。核戦争となれば、アメリカ、ソ連の両方が確実に破壊されてしまうから、戦争には走らない、という理屈だった。
東西冷戦中の国際情勢では軍事力の均衡で平和が守られたともいえた。軍事力の戦争を防ぎ、平和を守る、という国際情勢の逆説のような真実だった。だが東西冷戦は1991年、ソ連共産党政権の崩壊で終わった。その結果、アメリカは軍事面で唯一の超大国となった。パックス・アメリカーナ(アメリカの力による平和)とも評されるわりに安定した国際情勢が続いた。だがそれから30年の現在、中国が近代国家の歴史でも特筆されるほどの勢いでの軍事力増強を進め、急追してきた。
しかも中国は領土紛争や経済紛争にまで軍事力の威力を喧伝する。国際紛争の解決に軍事力を使うという侵略的な傾向である。南シナ海でのスプラットレー諸島の軍事占拠や尖閣諸島への軍事攻勢がその実例となった。
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