軍事力の役割の拡大【2023年を占う!】国際情勢③
Japan In-depth / 2022年12月12日 12時13分
中国は習近平政権下、台湾に対しても軍事的手段で併合を断行するという選択肢を強調するようになった。アメリカ議会のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問した際は前例のない大規模な軍事演習を実行して、台湾やアメリカへの軍事恫喝の姿勢をみせた。自分たちにとっての懸案といえる国際問題を軍事力によって解決しようとする基本の構えである。
軍事力での国際紛争の解決といえば、ロシアのウクライナ侵略も絵に画いたような実例である。ロシアのプーチン大統領がウクライナの政策を変え、領土の一部を奪取するという目的のために軍事力を使った。
それに対してウクライナのゼレンスキー大統領も国民の絶対多数も同様に軍事力を使ってロシアの野望を阻んでいる。国家と国家の衝突が交渉でも協議でも相互譲歩でもなく、軍事力の強弱で決まるという冷徹な現実がまざまざと示された。
軍事力の国際的な誇示といえば、中国やロシアにくらべて規模は小さいとはいえ、北朝鮮の動きも軽視できない。日本の方向に向けて、各種のミサイルを頻繁に発射してくるのだ。日本海を隔てただけの隣国の日本にとっては実感に迫られる軍事行動である。しかも北朝鮮の政府直轄のメディアは「日本のような邪悪な国は核によって海底に沈められるべきだ」とまで軍事恫喝をするのだ。
軍事力のこの種の役割の拡大は2023年にも続くと予測される。国際秩序を守るためにも、変えるためにも現実の世界では軍事力が主要な役割を果たす。2022年末までの世界ではその現実がきわめて明確となった。
その傾向は日本の戦後のあり方の最も深刻な弱点を衝くこととなる。日本は戦後の憲法で軍事力の役割という国際的な現実を否定してきたからだ。
日本は現憲法によって戦争や戦力を一方的に禁止する。軍事という概念も、その現実の役割をも、無視する。近年、その非現実性を部分的に修正しようとする動きはあるが、なお根幹は変わっていない。ここにも国難と呼べる危機がひたひたと迫っているといえよう。
(④につづく。①、②)
トップ写真:ウクライナ軍第58旅団の多連装ロケットシステム、MLRS(ウクライナ バクムート エリア、2022年11月23日) 出典:Laurent Van der Stockt for Le Monde/Getty Images
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