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「時間の問題」だった大統領失脚-ペルー政変の背景

Japan In-depth / 2022年12月12日 23時0分

「時間の問題」だった大統領失脚-ペルー政変の背景




山崎真二(時事通信社元外信部長)





【まとめ】





・今月7日、ペルーでカスティジョ大統領が議会解散を宣言した後、議会で弾劾され失職したが、当初から混乱続きで失脚は早くから予想されていた。





・与党から追放され、支持率急減の中、検察が汚職容疑で訴追したことで議会内の弾劾の動きが加速した。





・同大統領は1992年のフジモリ元大統領の“自主クーデター”を真似ようとした可能性もあるが、軍・警察の支持が得られず自滅した。





 





■発足当初から政治手腕に不安視





今回のカスティジョ大統領をめぐる政変劇は各国で衝撃的ニュースとして伝えられたが、同国内では早くから失脚を予想する向きが多かった。というのも、カスティジョ政権はスタート直後からつまずきの連続だったからだ。





「貧困層救済」や「資源国有化」など左派政策を表看板に昨年7月、登場したカスティジョ大統領だったが、もともと教職員労組指導者で国政経験に乏しく、政治手腕が不安視されていた。しかも議会では与党「ペルー・リブレ」(PL)は少数派で右派勢力に牛耳られ主導権を失い、政権発足後わずか2カ月で最初の内閣退陣を余儀なくされた。





在任中の約1年半に5回も首相が代わり、閣僚は70人以上が交代するという混乱ぶり。それだけではない。カスティジョ氏やその家族、閣僚らの数々の汚職疑惑が浮上、与党PL内での主導権争いも加わり、同氏としては大統領職を維持するには「一か八かの“自主クーデター”しか手段がない状況に追い込まれた」(ペルーの有力政治アナリスト)と言ってもいいだろう。





■支持率急減、検察の訴追で弾劾の動き加速





カスティジョ氏にとって大きな痛手となったのは、今年5月、新憲法を制定する制憲議会招集のための国民投票実施案が議会で否決されたこと。現憲法の全面的改正を選挙の一大スローガンに掲げていただけにこれによって与党PL内の支持の減少と求心力低下を招いた。マルクス・レーニン主義信奉者のセロンPL党首と党内穏健派のカスティジョ氏の対立が拡大、6月には同氏はPLから事実上追放された。





加えて、ロシアのウクライナ侵攻の影響による燃料費急騰に起因する輸送業者や農民のストに適切な対応を取らなかったことから、カステイジョ氏の地盤である地方の支持が急減。発足直後、概ね40%前後あった支持率も今夏の世論調査ではしばしば20%を切るようになった。





その後10月に検察当局がカスティジョ氏を収賄や地位乱用などの容疑で訴追すると発表、これが、議会で3度目の大統領弾劾への動きを加速化させる決定的要因となった。議会の大統領弾劾の試みは昨年12月と今年3月にあったが、いずれも、“弾劾不発”に終わっていた。





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