エネ不足で寒さに震える欧州
Japan In-depth / 2022年12月14日 11時15分
村上直久(時事総研客員研究員、学術博士/東京外国語大学)
【まとめ】
・ロシアへの経済制裁で原油と天然ガスの輸入をほぼ停止した欧州諸国は、エネルギー不足の状態で冬に突入しようとしている。
・ロシア産のガス・石油への依存を断ち切り、自立できるかどうか欧州の“強靭性”が試される。
・欧州諸国は不足分を米国やアフリカなどからのLNG輸入で埋めようとしているが、天候次第では各国で停電が頻発し厳しい冬となる。
ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁で原油と天然ガスの輸入をほぼ全面的に停止した欧州諸国の市民は深刻なエネルギー不足から、寒くて暗い冬に突入しようとしている。
欧州連合(EU)加盟国の中では、フランスやスウェーデン、フィンランドなどは全国的な停電のリスクにさらされている。欧州各国政府はこうした事態に備えてガス在庫の積み増しや電力節約の推進、石炭火力発電所の再稼働などを進めてきたが、寒波の程度によっては不十分になる恐れがある。こうした中で、EUは先進7カ国(G7)およびオーストラリアと協調してロシア産原油の取引価格の上限を1バレル当たり60ドルに設定することで合意。EUはガス価格の上限設定も模索している。
◇ 悲惨なシナリオ
この冬、欧州諸国での市民生活は以下のように悲惨なものとなる可能性がある。エネルギー節約のために輪番停電や緊急停電が実施され、携帯電話やインターネットのサービスが一時的に中断され、学校は暖房と電気の不足のために閉鎖され、交通信号さえ消えるという事態だ。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、フランス政府は全国の当局者に輪番停電実施の可能性に向けた計画を立案し始めるよう指示。英電力会社は電力生産のためのガスが不足するようになれば午後4時から7時までの停電に踏み切ることもあると各家庭に警告した。ドイツではろうそくが飛ぶように売れているという。
しかし、ロシアによるエネルギー関連施設への執拗な爆撃で数百万人の市民が暖房や電気、水がない状況下で凍り付く寒さに直面しているウクライナの人々の悲惨さに比較すれば、一日数時間の停電はそれ程厳しいことではないとの見方もある。
欧州で一般家庭や学校、会社で人々が暗くて寒い冬を迎えることになれば、それは欧州が安価で豊富に供給されていたロシア産のガス・石油への依存を断ち切り、自立できるかどうか欧州の”強靭性”を試されることになる。
◇ガス価格の上限設定も
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