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防衛3文書改定と日本経済 防衛産業はどう育成?【日本経済をターンアラウンドする!】その7

Japan In-depth / 2022年12月17日 22時11分

□防衛産業をどう育成?





装備品が動かせる状態にある稼働率は5割、弾薬の備蓄は防衛省の見積もりで必要量の6割であるなど、有事の際、組織的な戦いを継続できるという「継戦能力」の不足が専門家から指摘されている。そのため、ある程度、防衛予算を増やさざるを得ないのも確かである。ロシア、中国、北朝鮮、周辺環境を考えると国防費は国家にとって「保険」のようなものでもある。そして、国家防衛戦略では防衛産業を「防衛力そのもの」と位置づけ、生産基盤を強化することが明記される。





たしかに、国内の防衛産業というと戦闘機関連は1100社、戦車関連は1300社、護衛艦関連は8300社あるが、利益率が低く、撤退する企業が相次いでいる。そのため、防衛産業の育成もある程度は必要だろう。防衛装備品と技術の海外移転に関しても官民連携の強化は必要なものだろう。









▲図 【出典】防衛省作成資料、プロジェクト管理(取得プログラムの分析及び評価)





しかし、その育成の度合と連携のやり方が問題なのだ。寡占市場であり、言ってみれば市場価格もないようなもの、性能・機能優先のため機能追加などでコストが拡大しがちである。「利益を出しにくい」という意見もあるものの、ある意味「高額のもの」を政府が買わされることになりかねない。





コストが当初計画から膨張する構造が指摘されていることもあり、防衛省では、分析評価における見直し・中止の検討、共同履行管理型インセンティブ契約制度、作業効率化促進制度が施行されているし、頑張ってはいる。









▲図 【出典】防衛省作成資料、プロジェクト管理(取得プログラムの分析及び評価)





しかし、防衛産業が民間企業並のコスト削減努力を十分しているとは個人的には思えない。防衛産業の大手企業の年収水準も高い、ビジネスとして相当に恵まれていると思う。





防衛費増大をきっかけにして、メーカーの集約・再編、製造工程の業務改善・業務効率化、国際競争力向上、厳しい工数管理などのコスト削減促進など、防衛産業を育成すると同時に厳しい管理スタンスも必要になるだろう。





□防衛産業をきちんとコントロール





アメリカでは軍産複合体による政治への影響力が強く、軍事費の削減がかなわないできた。そもそも、日本の過去の悲惨な歴史も軍需産業が促進した面もある。軍需工業動員法や軍用自動車補助法で軍需工業の裾野が広がって、武器輸出商社が日本陸軍の統制下に創設され儲けていった。総力戦に備えるために国内軍需工業の充実が求められるというなかで、軍需産業が拡大していった。





戦争の悲劇は「軍部の暴走」ということで片付けられがちではあるが、裏の側面が軽視されている。軍需産業が儲けた時代を我々は教育で学んでいないし、そういった話は大っぴらにされない。筆者は大学時代に著名な経済学者から「儲かるからだよ、戦争は」と言われ面食らったことを覚えている。育成する側とされる側が馴れ合いにならないよう、政治と経済のつながりも厳しく律するべきだろう。防衛産業への天下り規制、業界からの政治献金規制、厳しい政策評価や査定、飴と鞭の効果的な業界指導なども構想すべきではないか。





(つづく。その1、その2、その3、その4、その5、その6)





トップ写真:記者会見する岸田文雄総理大臣(2022年12月16日) 出典:首相官邸




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