主権国家の主権の強化【2023年を占う!】国際情勢⑤
Japan In-depth / 2022年12月18日 11時0分
歴史的にも、いまの主権国家という存在やその基盤となる概念は17世紀のヨーロッパでの30年戦争の結果、産み出されたウェストファーリア条約での成果である。個々の人間の集団が改めて国家という形をとり、その国家がそれぞれ個別に自主独立の最高権限を有する主権国家となる。その主権をすべての国家が相互に認めあう。これが世界の現実なのである。
だから新しい年の世界では、アメリカはアメリカらしく、イギリスはイギリスらしく、そして中国やロシアもまた自国の力や意思をより明確に、国家としての独自の自主性、つまり主権の行使をより強固に発揮するということである。
しかし日本にとってはこの主権国家の主権強化も、苦手な課題だといえる。戦後の日本は戦争での惨禍への教訓などから、国家が強い主導権を発揮することに微妙だが根強い抵抗が絶えなかったといえよう。主権在民の民主主義が確立されたとはいえ、国家や政府が一定以上に強い力を行使することには、国民側の複雑な反発がちらつくことも多かった。
日本では国家というと、連想ゲームのように国家権力という言葉がつながってくる場合が多い。国民一般の間にもそうした連想があるのだ。これは国家を国民とは一体の存在とみず、国民に対峙するような立場にあるのが国家であり、政府なのだという、ときには無意識の感覚だといえよう。
だが民主国家では国民こそが国家のあり方を決める。国家には国民を強制的に従わせる拘束力、つまり権利があるが、同時に国民を守り、その福祉に貢献するという義務も存在する。だが日本では国家のその権利の部分を強権的にみて、国民側とは距離のある存在として意識する傾向が強かったといえよう。
だが世界の現実は日本にも日本国家がより自主的な、より断固たる判断を下し、行動をとることを迫るようになってきた。
だがなお、戦後の日本での国家忌避に近い傾向を考えると、日本国が政府の主導による主権の行使を強めることは、いくら国際環境がそれを求めるとはいえ、なお幾多のハードルも予想される。
(⑥につづく。①、②、③、④)
トップ写真:イメージ 出典:pengpeng/GettyImages
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