チリとペルーの動向が焦点、ルラ外交にも注目【2023年を占う!】中南米
Japan In-depth / 2022年12月19日 23時0分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・新憲法制定に向けチリのボリッチ政権は年明けから改憲プロセスを再開するが、その実現に政権の命運がかかる
・カスティジョ前大統領罷免を受け発足したペルー新政権は反政府デモに揺さぶられ、閣内不一致などで早くも退陣説が流れる
・ペルー情勢をめぐり二分化様相の中南米の調整役にルラ・ブラジル新大統領への期待も
■11月か12月に再び、国民投票-チリ
2023年の中南米で最も注目すべきはチリとペルーの政治動向である。チリでは、新自由主義を否定し、社会格差是正を目指すボリッチ大統領が2023年3月に政権担当2年目に入るが、早くも正念場を迎える。2度目の挑戦となる新憲法づくりに同政権の命運がかかっているからだ。
2022年9月、現行憲法(軍事政権下の1980年制定)に代わる新しい憲法草案が国民投票にかけられたものの、60%を超える反対で否決された。社会的権利や環境保護のほか、ジェンダー平等、先住民の権利を強く打ち出した草案だったが、急進的な内容に国民の懸念が増大したことが否決の要因とみられる。その後、3カ月にわたる与野党間の協議を経て先ごろ、改憲プロセスのやり直しについて基本的合意が成立した。
同合意によれば、2023年1月から専門家が新憲法草案のたたき台を作成、4月に「憲法審議会」のメンバーを選出、10月までに草案を作成した後、11月か12月に改めて賛否を問う国民投票を実施する計画だ。どのような憲法草案ができるのか、そして再度の国民投票で承認されるかどうかが、今後のチリ政治を決定づける。
それだけではない。チリはこれまでも中南米各国のモデルケースとされることが多かっただけに、新たな改憲プロセスの行方はこの地域の将来を占うことにもなる。
■孤立無援の新政権下で情勢は不透明-ペルー
2022年12月初め、カスティジョ前大統領が議会で罷免・拘束された後も混乱続きのペルーが安定に向かう見通しは立っていない。
カスティジョ氏の後任となったボルアルテ大統領はこのほど、全土に30日間の非常事態宣言を発令し、前大統領の拘束などに抗議する反政府デモを強権で抑えようとしている。だが、1カ月後に混乱が収まるかは不透明。カスティジョ前大統領の拘留を18カ月延長するとの最高裁の決定に対する反発が強いためだ。文化相と教育相が治安部隊による鎮圧で多数の死傷者が出たことに抗議し辞任するなど早くも、新内閣の不一致が露呈した。ボルアルテ政権は反政府デモ沈静化のため、当初打ち出した2026年4月の大統領選実施案をさらに前倒しし、2023年12月に行う提案を議会に出したが、否決された。
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