日本銀行の金利操作見直し 「利上げ」なのか?
Japan In-depth / 2022年12月27日 23時0分
そうした目線は、ロシア、中国も含め、まさに地球規模でサプライチェーンが急速に拡大した下で実現したインフレ率の実績を踏まえてのものだ。これからは、ロシアを外し、中国とも分断気味になる。その中で、少なくとも、グローバル化のスピードがこれまでと同じと考えることは難しい。その下で、定常的な、即ち労働市場の完全雇用に悪影響を与えないインフレ率はどれくらいの水準になるだろうか。
さらに、そのグローバル化のスピード・ダウンは趨勢的な成長率にも影響を与えるかもしれない。成長率が高まっていく展望が拓けないとすると、企業は返済を前提にした債権と自己資本の比率、即ちレバレッジを見直す必要に直面する。企業の現在価値がこれまでのように拡大しないという予想になるからだ。
そのディレバレッジが、現在まさに国際金融市場で進行している。それは、債券全般の人気がこれまでのように高まらないことを意味し、したがってこのこともまた長期金利をこれまでよりは高めのものとするかもしれない。現在の長期金利高の一部は、一時的とされる足元のインフレに対応した中央銀行のアクションだけでもたらされたものではない可能性がある。
もちろん、先行きのことは、はっきりとは分からない。インフレはやはり一時的なものかもしれない。しかし、本当に経済環境が悪化したら、日本の長期金利はこれまでの下限よりも低い-0.5%まで下がり得るのだ。日本銀行は、金融市場の判断をより尊重するスタンスになったというのがフェアな評価ではないか。
・期待に働きかける金融政策の難しさ
そうは言っても、ついこの前まで日本銀行は、変動幅の拡大は利上げと同じことで、適切ではないと言っていたではないかと言い返したくもなるだろう。しかし、国債市場のように、本来、金利が自由に形成され、先物市場もあるマーケットにおいては、先行きの思惑が現在の金利を動かす。したがって、日本銀行が、将来の運用のあり方の変更をほのめかした途端に、それを先読みした金利形成になってしまう。そのため、変更は突然せざるを得ないという面もある。
また、近年、期待に働き掛ける金融政策ということが言われてきた。サプライズで金融政策の効果を出すのではなく、中央銀行と金融市場参加者の間のコミュニケーションを通じて、激変がおきないよう市場環境を推移させる。そういうイメージだろう。その観点からすると、中央銀行がそれまでやらないと言っていたことを急にやることに対して、違和感が生じても仕方がない。
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