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先制攻撃をしないためにこそ必要な核抑止力

Japan In-depth / 2023年1月11日 18時0分

山口発言が出た同じNHKの番組で、立憲民主党の泉健太代表も、「今の時代は発射台付き車両からミサイルを射出する」と強調し、移動式ミサイルの位置を把握して、発射前に無力化するのは不可能との趣旨を述べている。


一方、日本維新の会の馬場伸幸共同代表は「わが党は敵基地攻撃能力とはいわず、領域内阻止能力と呼んでいる。抑止力として一定の反撃能力を持つことは絶対に必要で、領域内阻止能力は予算をつけて高めていくべきだ」と力説した。


国民民主党の玉木雄一郎代表も「敵基地攻撃能力という言葉はどうかと思うが、相手領域内で抑止する力は必要だ」と同調した。


自国領域内で超音速ミサイルの迎撃を試みるより、相手領域内で発射前のミサイルを叩く方が効果的との議論は、自民党の小野寺五典安全保障調査会長(元防衛相)などが夙(つと)に行ってきたところである。


その場合、敵基地攻撃と言ってもあくまで迎撃の一種であり(場所が自国内か敵国内かの違いだけ)、専守防衛と矛盾しないとの理論構成が採られてきた。


問題は、中国や北朝鮮が日本に対し「核の恫喝」に出てきた場合である。


その場合、発射直前に相手の核ミサイル基地を叩くという発想は現実的ではなく、非常な危険を伴う。


まず、中国も北朝鮮も移動式発射台(輸送起立発射機)をすでに運用しており、常時正確な位置情報を得るのは不可能に近い。防衛白書も移動式ミサイルは「発射の兆候を事前に把握するのが困難」と記している。


しかも、緊張が高まる状況下では、点検や修理などのメンテナンス活動を発射準備と誤認してしまう可能性も常に付きまとう。結果的にかなりの死傷者を出す不意打ち攻撃となり、相手に核ミサイル使用の口実を与えかねない。


実際、2022年4月1日、韓国の徐旭国防部長官が「(北朝鮮の)ミサイル発射の兆候が明確な場合には、発射地点や指揮・支援施設を精密攻撃できる能力を備えている」と発言したのに対し、北の独裁者金正恩の妹、金与正朝鮮労働党副部長が「南朝鮮が我々と軍事的対決を選択するなら、我々の核戦闘武力は任務を遂行せざるをえない」と核報復を示唆している(同5日)。


さらに9月8日、北朝鮮は最高人民会議で「核戦力政策に関する法令」を成立させ、「指揮統制システムが敵対勢力の攻撃により危険に瀕する場合、核打撃が自動的に即時に断行される」(第3条)と明確に規定した。


さらに金正恩は、同年の朝鮮労働党中央委員会総会最終日の12月31日、「核心的な攻撃型兵器で、敵を圧倒的に制圧できる。本当に感慨無量だ」と述べた上、「核戦力は戦争の抑止と平和・安全を守ることを第1の使命とするが、抑止が失敗したときは、防衛とは異なる第2の使命も決行する」と先制攻撃の意思を明言した。


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