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先制攻撃をしないためにこそ必要な核抑止力

Japan In-depth / 2023年1月11日 18時0分

こうした状況下では、発射前に基地を叩く戦術では、危険な相手との危険な神経戦となり、先制核攻撃を受ける可能性が高まる。


やはり、事前ではなく事後、すなわち相手が大量破壊兵器を用いたり、非人道的な無差別攻撃を行ったりした時点で、その指令系統中枢に「耐えがたい被害」を与える反撃戦略を抑止の基本とすべきだろう。


先に触れたとおり、小野寺を会長とする自民党安全保障調査会は「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」と題する文書で、次の認識を示した(2022年4月26日)。


《弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力(counterstrike capabilities)を保有し、これらの攻撃を抑止し、対処する。反撃能力の対象範囲は、相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含むものとする》


攻撃対象をミサイル発射台に限定とも取れる従来の「敵基地攻撃能力」(それゆえ河野太郎や山口那津男、泉健太らの非建設的反論を生んだ)が、対象に相手司令部など「指揮統制機能」も含むことを明示した上で「反撃能力」という言葉に変えられた。適切な修正と言える。


その後政府が発表した「国家防衛戦略について」(安保3文書の一つ)では次のように書かれている。


《相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要がある》


正しい発想である。ただし通常戦力による反撃では、相手司令部の無力化は困難で、抑止力として充分ではない。反撃ミサイル1発につき、地上の構造物を一つか二つ破壊できる程度だろう。


核の脅しに対しては、やはり相手の指令系統中枢を壊滅させられる核による対抗手段の明示が不可欠である。


私は英国型の独自核抑止力を日本も整備すべきだと思っている。すなわち発見されにくい潜水艦に核弾頭搭載ミサイルを装備して潜行させる「連続航行抑止」と呼ばれる戦略である。


英国の場合、具体的には戦略原潜4隻が、それぞれ16基のトライデントⅡミサイルを搭載し(=1基当たり核弾頭3発を装備できる。4隻合わせて約200カ所の目標を攻撃可能)、常時1隻は外洋に出るシステムを維持している。なおフランスもほぼ同様の核抑止システムを採っている。


ちなみに、ソ連が人工衛星の打ち上げに成功し、ミサイル開発で先行したことを印象付けたスプートニク・ショック(1957年)を受け、NATO首脳会議が核共有を決めたのが同年12月であった。英仏は同時に独自核抑止力の開発も加速させた。先に引いた鳩山一郎首相答弁の約1年後である。


山口公明党代表の言うように、日本が70年前の議論に固執しているのが悪いのではない。70年前に始めるべきだった本格的な核抑止力論議をいまだに始めていないことが問題なのである。


トップ写真:記者会見を行う岸田総理(2022年12月16日 総理大臣官邸)出典:首相官邸


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