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アメリカ議会、混乱の真相

Japan In-depth / 2023年1月15日 19時3分

しかし日本の大手新聞などはこの議長選出の混乱に対して「共和党内の分裂」とか「共和党内の政策不一致をより広げる」というような見方を述べている。ワシントンでの現実とは異なる認識だといえる。





ではアメリカ議会の上院の動向を眺めてみよう。





上院では2022年11月の中間選挙で民主党はかろうじて多数派を保った。だがその後、新会期の間際にアリゾナ州選出のカーステン・シネマ議員が民主党を離党するという造反が起きて同党首脳を動揺させた。





この結果、上院では民主党50、共和党49、無所属1という議席の構成となり、民主党はなお多数派の座にあるものの、シネマ議員はこれまでにも造反の実績があり、民主党にとって上院の運営も複雑な要素が増すこととなったのである。









▲写真 婚姻尊重法案を可決した後、記者会見する民主党カーステン・シネマ上院議員 出典:Photo by Anna Moneymaker/Getty Images





シネマ議員の離党はいまのアメリカ立法府での民主、共和両党の政策の激突だけでなく両党内の揺れをも象徴したといえそうだ。





アメリカ南西部アリゾナ州で史上初の女性の上院議員となったシネマ氏は2012年から連邦議会下院に3選、18年に上院選で当選した。現在46歳だが、政治歴は長く、州議員としても活動した。連邦議会では一貫して民主党所属だった。





シネマ議員は連邦議会では初めてに近い同性愛宣言者でLGBT(性的少数派)の権利保護にも動いた。だが政府支出の規模や税制、企業対策などでは民主党リベラル派のバイデン政権の「大きな政府」策に反対する保守傾向を示すことが少なくなかった。





同議員は民主党内保守派のジョー・マンチン議員と連携し、上院での少数派の権利とされるフィリバスター(長演説での議事妨害)制の廃止を求める民主党の提案や増税案にはっきり反対してきた。バイデン政権の不法入国者対策やインフラ整備の法案にも難色を示した。その結果、民主党内のリベラル派からは厳しく糾弾されるようになった。





シネマ議員は離党を突然に発表した12月9日、その理由として以下の骨子を述べた。





「民主、共和両党とも過激派が自分に反対する側を悪魔化してののしり、二大政党制は瓦解した。この状況では私はアリゾナ州の選挙民の期待に沿えない。無所属の独立議員として活動するほかない」





その背景にはとくに民主党側のリベラル左派活動家たちが首都ワシントンでもアリゾナ州でもシネマ議員への攻撃を激化させているという実態がある。





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