制度的に不可能な国連改革
Japan In-depth / 2023年1月20日 11時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・国連は制度的に改革不可能。自由主義圏中心の有志連合を活性化させていくのが正解。
・中露両国が国内で批准手続きを完了しない限り、日本は永遠に常任理事国となれない。
・G7やQUADのような自由主義を基調とした有志連合に重心を移していくべき。
国連は制度的に改革不可能な組織である。無駄な期待を持つのではなく、「国連離れ」を積極的に進め、自由主義圏中心の有志連合を活性化させていくのが正解である。
国連組織中、最大の権限を持つ安全保障理事会は、拒否権を握る常任理事国5カ国に、ファシズム国家の中国とロシアが含まれ、ロシアのウクライナ侵攻非難決議すらできなかった(ロシアは拒否権発動、中国は棄権)。
効率化という観点において、国連諸活動の「改善」を図る道はある。米国のジョン・ボルトン元米国連大使(トランプ政権で大統領安保補佐官)は、その唯一の方法は運営資金の「割当拠出制」を「自発的拠出制」に改めることだという。
すなわち経済力=国内総生産(GDP)に応じて各国に拠出金を割り当てる現在のシステムを、各国が自主的判断で「機能的な事業にのみ資金を拠出し、コストに見合った結果を求める」システムに替える必要がある。
《国連も「市場テスト」に掛けようということだ。加盟国は、意義なしと判断した事業からは資金を引き揚げればよい。国連以外の事業体の方が効率的と判断すれば、そちらに資金を振り向ければよい。国連を優遇する理由はどこにもない》
日本では、中露が拒否権を持つこの異形の組織に跪拝する「国連第一主義」がいまだ根強いが、率直に言って国民の税金を浪費し、カモにされ続けるだけである。
国連は数多ある多国間フォーラムの一つに過ぎない。むしろ、G7(先進7カ国)やクアッド(日米豪印)のような自由主義を基調とした有志連合にできるだけ重心を移していくべきだろう。それら組織では中露は拒否権保有どころか、参加すら許されていない。
「安保理常任理事国入り」を、いまだに掲げ続ける外務省関係者も多い。国際ロビー活動と称して、相当な税金を費やしてもきた。しかし、常識的に見て実現可能性はない。
常任理事国に関しては、具体的に5か国の国名が国連憲章に列挙されており、日本が新たに加わる場合、憲章の改正が必要になる。
改正は、「総会の構成国の3分の2の多数で採択」された後、「安保理のすべての常任理事国を含む加盟国の3分の2によって批准」されねばならない(第108条)。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
安保理、ガザ停戦決議案を否決 米5回目の拒否権
共同通信 / 2024年11月21日 6時37分
-
ガザ即時停戦決議案、米の拒否権で否決 停戦めぐり米の拒否権行使は5回目
日テレNEWS NNN / 2024年11月21日 6時36分
-
ガザ停戦めぐる安保理決議案採決 アメリカが拒否権行使「人質解放につながらない決議案に賛成できない」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月21日 3時25分
-
米、ガザ停戦求める安保理決議案に拒否権行使
ロイター / 2024年11月21日 3時10分
-
G20、討議初日に異例の首脳宣言公表 ガザとウクライナを憂慮も「露侵略」盛らず
産経ニュース / 2024年11月19日 9時56分
ランキング
-
1「クマ駆除要請の拒否を認める」北海道猟友会 全道71支部に通知
HTB北海道ニュース / 2024年11月25日 18時31分
-
2大阪メトロの座席で尻にやけど…原因は「アルカリ性洗浄剤」 警察は液体が座席に付着した経緯を捜査
MBSニュース / 2024年11月25日 18時0分
-
3能登地震で不明の男性か 土砂崩れ現場で「人のようなもの」発見 石川・輪島市
日テレNEWS NNN / 2024年11月25日 20時18分
-
4「70万円あまりを11月4日に支払った」 斎藤兵庫県知事代理人が内訳も明かす 知事選の選挙活動めぐり公選法違反の可能性との指摘を受け対応 近く「請求書を公開する」とも
ABCニュース / 2024年11月25日 14時43分
-
5和歌山知事が国民民主党を批判 年収の壁巡り「無責任」
共同通信 / 2024年11月25日 16時28分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください