ベネズエラ、勢いづくマドゥロ大統領、暫定政権“自滅”
Japan In-depth / 2023年1月21日 18時0分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・ベネズエラ野党連合はマドゥロ政権打倒に失敗、グアイド暫定政権の解散を発表。
・米政府、石油供給ひっ迫でベネズエラ制裁緩和へ。マドゥロ政権は勢いづき、野党勢力は弱体化。
・経済好転でマドゥロ政権自信深め、強権支配を続けると予想される。
■グアイド暫定大統領に「失望した」野党連合
ベネズエラ情勢が急変している。マドゥロ大統領が米国による制裁緩和で政権運営に自信を強める一方、同大統領追放を目指したグアイド暫定政権は解散に追い込まれるなど、新たな局面を迎えている。
ベネズエラの野党連合は昨年12月、自陣営で構成する“国会”でグアイド氏率いる暫定政権の解散を賛成多数で決め、年明け早々、“新国会議長”にスペイン亡命中の女性政治家フィゲラ氏を選出、マドゥロ氏に代わる新たな指導者にすえた。
2019年に当時、国会議長だったグアイド氏を「暫定大統領」に選出した野党連合が自ら、同氏に引導を渡したのはその指導力に見切りをつけたためとみられる。グアイド氏は「暫定大統領」就任当初は米国など欧米諸国の支持を得て高い人気を誇ったものの、その後国民の間に支持を広げることができず、一時はマドゥロ政権打倒を軍に呼びかけるも失敗。
野党がボイコットする中、2020年12月に実施された国会選挙でマドゥロ派の圧勝を許し、新国会が成立してからはその求心力の急激な低下を招いた。
カラカスの有力大学が昨年11月行った世論調査ではグアイド氏の支持率はわずか6%。野党連合が同氏率いる暫定政府を「もはや役に立たない」と批判し、解散を発表したことは「グアイド氏に対する失望」(カラカスの現地メディア)の結果だろう。
中南米情勢に詳しい米有力紙「マイアミ・ヘラルド」は専門家の意見として「ベネズエラ野党勢力の“自滅”」と報じている。
■石油供給ひっ迫からマドゥロ政権に接近-米
一方、米メディアの間では、バイデン政権のベネズエラへの対応がここに来て軟化したことが決定的な影響をもたらしたとみる中南米専門家の意見が目立つ。
米CNNのスペイン語放送は、ウクライナ戦争に起因する米国の石油供給のひっ迫を受けバイデン大統領がベネズエラ政府との関係修復を図った点を強調。バイデン政権がロシアのウクライナ侵攻への制裁としてロシア産原油の禁輸措置をとったのは周知の事実。
バイデン政権は新たな石油調達先としてベネズエラに狙いをつけ、マドゥロ政権に接近したという事情がある。こうした動きを受け両政権の接触が強まり、昨秋には米国で収監されていたマドゥロ大統領親族2人の釈放と引き替えにベネズエラ国内で投獄されていた米国人7人が解放され、双方の歩み寄りが進んだ。
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