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不要な「核の傘」信頼性論議

Japan In-depth / 2023年1月25日 23時0分

論理的にも、ファクトの面でも大いに疑問があろう。


まずバイデン政権は、NATO加盟国でないウクライナには「核の傘」を提供していない。ロシアがウクライナに核を用いれば、アメリカがロシアに核で反撃する可能性もあると匂わせる「曖昧戦略」すら取っていない。むしろその可能性を否定することで、戦争のNATOへの波及を防ごうとしてきた。


確かに資金や武器の供与においては、アメリカは他国をしのぐ貢献を見せている。しかしそれは核抑止とは全く別次元の話で、ロシア・ウクライナ戦争と米国の「核の傘」の信頼性とは論理的に結びつかない。


ついでに言えば、ルトワックは長打も打つが打率は低い人で(アメリカではそうした評価)、あまり持ち上げるのは問題だろう。


アメリカの「核の傘」に完全に頼るというのは、米大統領に、アメリカを守るか日本を守るかの究極の選択を強いるという意味でもある。日本が独自核を持てば、そこまでの選択を他国のリーダーに迫らなくて済む。核抑止力を分担するのは同盟国の責務ともいえるだろう。


英国でも、サッチャー政権が潜水艦発射核抑止システムのレベルアップに乗り出した時、何も最新鋭の多弾頭ミサイルを持たなくてもよい、米国の「核の傘」を信頼しないのか云々の議論が起こった。


サッチャー政権は以下のような意思統一を行った。


アメリカの「核の傘」の信頼性については議論しない。英米関係を不必要に緊張させるだけであり、もし聞かれれば、「信頼する。しかし独自核抑止力のレベルアップもする。そのことで同盟全体としての抑止力が高まり、英米両国にとって望ましい」と答える―。


正しい発想であり、受け答えだろう。


大阪大名誉教授の坂元一哉氏が2023年1月16日付の産経新聞コラムで、日本の新安保戦略について次のように書いていた。


《「(反撃能力については)今後も米軍にまかせたままでいいではないか」という反論もでてきそうだが、これを保有し、日本自身も米国と一緒に反撃できるようにすることで、反撃の確実性が増すし、よりしっかりした反撃をすることができるようになる。それで日本有事に対する日米同盟の対処能力が増せば、その分、同盟の抑止力も増すだろう。そうなれば結果として、日本有事が発生する可能性を低下させることができる》


 その通りである。そしてこれは、通常戦力のみならず核抑止力についても当てはまるだろう。


トップ写真:国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画の3つの文書を閣議決定を受けて記者会見する岸田文雄総理(2022年12月16日 首相官邸にて)出典:首相官邸


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