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クーデターから2年 ミャンマー

Japan In-depth / 2023年1月29日 11時0分

★絶えない虐殺や人権侵害事案 


各地で住民への令状なしの拘束、暴力、拷問そして虐殺が反軍政の立場から報道を続ける複数のミャンマー独立系メディアによって連日伝えられている。クーデターから2年を迎えるにも関わらず一向に改善しない治安状態に軍政には焦燥感が募っているとの見方もあり、それが各地での軍による虐殺や人権侵害に結びついているとみられている。 


学校や仏教寺院への攻撃や集会、コンサート会場への空爆で多くの子供、住民、芸能人までが犠牲となっている。未成年の少女らに対する性的暴行、その後に殺害して全裸の遺体を遺棄したり逃げ遅れた高齢者が残る住居に放火したりして焼殺、拷問の末の斬首など軍兵士による暴虐はモザイクをかけたとは言え生々しい写真を添えて独立系メディアは伝えている。


こうした独立系メディアの記者は軍政のブラックリストに載せられており、国内では地下に潜伏しながらあるいは軍政のスパイが暗躍しているとされる隣国タイなどから遠隔取材をするなど命懸けでの活動を続けている。


★行き詰るASEANの和解交渉


ミャンマーも加盟する地域連合であるASEANはクーデター直後から事態の収拾に向けた和解調停に乗り出し、クーデターから2か月後の2021年4月にインドネシア・ジャカルタで緊急首脳会議を開催し、軍政トップでクーデターの「張本人」であるミン・アウン・フライン国軍司令官も参加して善後策を協議した。この会議で議長声明の形で「5項目の合意」に全会一致で達し、以後ASEANによる交渉の基本線となった。


 


しかし軍政は「5項目の合意」のうち「武力行使の即時停止」と「関係者全員とのASEAN特使との面会」の2項目で一切妥協せず、交渉は実質的に行き詰まる状態が続いている。2022年の首脳会議など一連のASEAN会議はミャンマー抜きで開かれているが、反軍政勢力のNUG代表をASEAN会議に招待するべきだとするマレーシアのような強硬意見が出る一方で、ミャンマーの「外相格」を招いてインドネシアやマレーシア、フィリピン、シンガポールといった対ミャンマー強硬派が参加しない「非公式外相会議」をタイが主催するなどASEAN分断の危機を迎えている。


★鍵は中国しかいないという実情


こうした状況の中で迎えるクーデターから2年、反軍政抵抗組織による治安悪化にも関わらず軍政は総選挙を強行しようとしており、ミャンマーの民主化は遠のく一方だ。最近ミャンマーでは総選挙に向けた選挙人登録作業に関わる地方行政府の担当者の殺害や事務所の放火など選挙妨害の動きが活発化している。いずれも選挙実施を阻もうとする反軍政組織によるものとみられている。


欧米や国連などの国際社会はロシアが軍事侵攻したウクライナ問題に大きな関心を寄せている中、ミャンマー問題はASEANも「お手上げ状態」となり、残るはミャンマー軍政の最大の後ろ盾である中国・習近平国家主席の「胸三寸」というのが実情だ。しかし習近平国家主席がミャンマー問題で和平に向けて積極的に動こうとしている兆候は今のところ一切ない。混迷の中で総選挙を迎えようとしているミャンマーではさらなる治安悪化の懸念が高まっている。


トップ写真:米大使館の外でクーデターを抗議する人たち(2021年2月16日、ミャンマー・ヤンゴン)


出典:Photo by Hkun Lat/Getty Images


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