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来年の台湾総統選を巡る民進党内の紛争

Japan In-depth / 2023年1月30日 19時0分

来年の台湾総統選を巡る民進党内の紛争




澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)





【まとめ】





・来年の総統選挙、民進党主席頼清徳副総統の出馬が有力。





・蔡総統は、来年の民進党総裁候補を頼清徳ではなく陳建仁にしたいのではないか。





・国民党と民衆党が組めば、民進党は苦戦するかもしれない。





  




昨2022年11月の台湾統一地方選挙で、最大野党・国民党が大勝した。与党・民進党の蔡英文総統は、敗北の責任を負って党主席を辞任(a)している。


そこで、まもなく民進党内で主席選挙が行われる運びとなった。けれども、同選挙には、頼清徳副総統だけしか立候補しなかった。そのため、今年1月18日、頼副総統は党主席に就任(b)している。このままならば、来年の総統選挙には頼副総統の出馬が有力視される。


だが、実は、蔡総統は、必ずしも頼副総統を快く思っていない。前回(2020年)の総統選では、蔡総統が再戦を目指していたが、島内であまり人気がなかった。そこで、人気の高い頼清徳が、総統選に立候補をしようと試みたのである。


2019年3月、民進党内で総統予備選挙が告示された。その際、同党内は「蔡支持派」と「頼支持派」で割れた。また、コロナ下では、スムーズに予備選を行う事ができなかった(だから、党幹部が予備選の引き延ばしを図っている)。


初め、世論調査では、頼副総統が優勢だった。だが、同年6月、世論調査の結果、蔡総統が頼副総統を破り、民進党の総統候補(c)となっている(前者が35.7%、後者が27.5%で8.2%ポイント差)。


その後、蔡総統は、翌年1月の総統選挙での勝利を目指し、頼清徳をあえて副総統候補に指名した。これで、民進党はベストペアが誕生したのである。その結果、蔡総統は、国民党の韓国瑜候補に圧勝している。しかし、再選後、蔡総統は、頼副総統と距離を置いていた。


今年1月27日、蔡総統は、同19日に辞任した蘇貞昌行政院長(首相)に代わり、総統に近い陳建仁前副総統を行政院長に指名(d)した。元来、陳前副総統は疫学が専門である(国立台湾大学や米ジョーズ・ホプキンス大学で学んでいる)。


かつて、陳前副総統は、行政院(内閣)署署長や行政院(国家科学委員会主任委員を歴任しているが、生粋の政治家というわけではない。ただ、陳建仁は政治家の家系だという。陳の父、陳新安は高雄国民党の「白派」の元老であり、王金平元立法院長(国会議長)の「師匠」(e)だった。


蔡総統は、表向きは行政院(内閣)の刷新で、党の立て直しを図るとしている。確かに、陳新行政院長の組閣は、フレッシュな側面がある。だが、ひょっとして、蔡総統の真の狙いは、来年の民進党総統候補を頼党主席ではなく、陳院長にしたいのではないだろうか。


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