検査はもはや有効ではないのか?イギリスのコロナ対策
Japan In-depth / 2023年2月1日 18時0分
金田侑大(北海道大学医学部)
【まとめ】
・英国政府は4月1日から無料の検査制度を撤回、年1回の接種を推奨する方針に方向転換した。
・私の検証で、検査頻度はCFR死亡率に統計的に有意な影響を及ぼしていないことが明らかとなった。
・しかし感染を仕方ないと諦めず、地域レベルで感染対策に有効な対策の検証と実行を繰り返す姿勢が重要。
“国家に関する政策の決定は、すべて、慎重かつ不可逆的に、期間ではなくエビデンスに基づいて行われる”
これは、イギリスがコロナ対策としてロックダウンを実施していた頃に、元英首相ボリス・ジョンソン氏が発言していた、イギリスのコロナ対策の基本的方針を示す言葉だ。しかし、私が今年の1月に訪れたイギリスでは、コロナ対策と呼ばれるものは、日常の中では正直、ほとんど何も感じることができなかった。
そもそもイギリスでは、日本よりもはるかに強力な検査と感染者の追跡システムが構築されていた。国民保健サービス(NHS)が管理する“NHS COVID-19 app”と呼ばれるアプリが2020年9月24日より導入され、アプリによって、検査で陽性となった人と接触した場合、自動で隔離の指示が通知されるシステムとなっていた。
また、この指示には法的な義務があり、従わない場合には罰金が発生することとなっていた。実際、このアプリのリリースから12月末までの3か月間の有効性の検証は科学雑誌natureに発表されており、30~60万人の感染予防に貢献したと推定されている。
私が2021年9月から2022年7月まで英エディンバラ大学に留学していた際にも、学校には無料のPCR検査用のブースが設けられ、NHSも、無症候であっても週に2回の抗原検査によるスクリーニングを全国民に推奨しており、学校で無料の抗原検査キットをいつでも持ち帰ることが可能であった。
しかしながら、イギリス政府は、2022年4月1日から無料の検査制度を撤回し、今後は年1回の接種を推奨するという方針に大きく方向転換した。イギリス政府はこれを、“エビデンスに基づいた妥当な決定”としているが、果たして本当にそう言えるのだろうか。変異株の出現や、3回目、4回目とワクチン接種が進められるたび、その有効性を検証する論文は多く発表されてきたが、検査頻度に関する議論は限られている。そこで私は、イギリスのこのような政策転換の是非を検証し、論文としてまとめ、今月16日に、JMA Journalから発表させていただいた。( https://www.jmaj.jp/detail.php?id=10.31662%2Fjmaj.2022-0143 )
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