中国海警局の妨害激化 南シナ海
Japan In-depth / 2023年2月10日 18時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・南シナ海で中国海警局船舶による妨害行動が増加。
・米比の安全保障分野での協力が密接になったことが中国を刺激。
・ASEANが一致団結して中国との協議、交渉を進めることが肝要。
南シナ海で中国の海警局船舶による周辺国の漁船や沿岸警備隊船舶への妨害行動や嫌がらせがこのところ増えていることが明らかになった。
米国防長官によるフィリピン訪問で米比の安全保障分野での協力が密接になったことなどが中国政府を刺激して、海警局船舶による妨害行動が激化した、との見方が有力視されている。
米国ラジオ局「ラジオ・フリー・アジア」系列のニュースサイト「ブナ―ル・ニュース」が2月7日に伝えた。
報道によると2月5日から6日に南シナ海のフィリピン排他的経済水域(EEZ)内にあるサビーナ礁近くの海域を航行中のフィリピン沿岸警備隊の艦艇「マテパスクア」に対して中國海警局船舶「5205号」が進路を妨害して比艦艇が長時間の停泊を余儀なくされ、その後も執拗に追尾されたという。
比沿岸警備艇に備え付けられた「自動識別システム(AIS)」の信号で中国海警局船舶と沿岸警備艇双方の動きをとらえることができて双方の行動が明らかになったとしている。
これに先立つ2月1日には同じくフィリピンのEEZ内にあるミスチーフ礁近くの海域でフィリピン海軍艦艇「アンドレス・ボニファシオ」に対して中国海警局の2隻の船舶が追尾、監視活動を続けたことも報告されている。
■米比の安全保障協力強化が影響か
こうした中国海警局船舶の活動活発化の背景には2月2日にフィリピンを訪問した米オースティン国防長官とフィリピンのガルベス国防相による会談があるのは間違いないとみられている。
米比国防相会談ではフィリピン国内にある軍の施設4カ所を新たに米軍が使用可能とすることで合意し、これで米軍はフィリピン牢内にある9つの軍事拠点、基地を使用することが可能になった。
さらにドゥテルテ前大統領時代に中断していた米比合同の南シナ海パトロールを再開することでも合意に達し、今後米比海軍、空軍などとの合同のパトロールが南シナ海で展開され、台湾有事をもにらんだ中国の動きを警戒監視する体制がより強化されることになった。
こうした米比の動きに中国は強い反発を示し2月3日には在比中国大使館が声明をだして「米国の行動は地域の緊張を高め、地域の平和と安定を弱体化させるものである」と批判し、フィリピン政府の対しても「米国に利用され、荒波に巻き込まれることに抵抗することを期待する」と米追従の姿勢を咎めた。
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