スパイ気球 中国国内で割れる意見
Japan In-depth / 2023年2月14日 11時33分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2023#6」
2023年2月6-12日
【まとめ】
・米軍が撃墜した気球が中国政府全体で考え抜いた対米諜報戦とは到底思えない。
・中国側が何故報復しないのか。中国国内の意見が割れているためだと疑っている。
・中国政府内に「アメリカはけしからん」と思っている軍と、対米関係を改善したいと望む勢力が併存している、と推測する。
おっと、先週はすっかり原稿を完成して送ったつもりになっていたが、何と全く送っていなかったことに今ようやく気付いた。もう認知症なのか。
やや旧聞に属するが、今回は米空軍が撃墜した高高度スパイ気球を取り上げる。実際に米軍は既に4回も気球を撃墜しているのだから。これら全てが中国製という訳ではないだろうが・・・。
もう一つ気になったのが、日本のマスコミの「オフレコ破り」である。先週は政務の総理秘書官の閣僚への「お土産購入」問題を取り上げたが、今回は事務の総理秘書官のLGBTQ+関連「オフレコ発言」が「オフレコではなくなった」話が日本で大ニュースになっている。これも筆者には、よく分からないニュースである。
まずはスパイ気球から。
米本土上空を飛行し米軍が撃墜した中国のスパイ気球は、中国軍内で宇宙やサイバー戦を担当する戦略支援部隊が管轄し運用に関わっていたらしい。中国軍は気球の米本土侵入を中国の外交部にも報告しておらず、最高指導部は部門間の意思疎通の改善を指示したと報じられている。
やっぱりね、そもそも人民解放軍が外交部に知らせる訳はない。また、中国は民間気象研究用飛行船だと主張するが、筆者の疑問は米中双方に多々ある。例えば、米側はこれを「情報収集用」だとするが、今はかなり詳しい内容が衛星写真で見れるし、電波情報を取るにしてもあんな気球で良い情報が取れるとは思えないのだ。
それなのに、なぜあのようなタイミングで気球をアメリカに送ったのか。ブリンケン国務長官が中国に行くことは決まっていたはずだ。撃墜直後に中国側は報復を匂わせていたが、結局そのような措置は取っていないし、取れるわけもない。そう考えると、今回の気球が中国政府全体で考え抜いた対米諜報戦とは到底思えないのである。
百歩譲って中国側が言うように、気球が間違って飛んで行ったとしても、大型バス3台分くらいの大きな機材をぶら下げているのだから、軍が管理している気球であることは間違いなかろう。残骸を回収して詳しく調べれば、あの気球が軍事用であることが明らかになるはずだ。
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