スパイ気球 中国国内で割れる意見
Japan In-depth / 2023年2月14日 11時33分
最後は中国側が何故報復しないかだが、筆者は中国国内の意見が割れているためだと疑っている。わざとブリンケン訪中直前に気球を送りながら、中国が一切報復をしないとなると、中国政府内に「アメリカはけしからん」と思っている軍と、何とか対米関係を改善したいと望む勢力が併存している、という推測が成り立つのである。
この中国のスパイ気球については産経新聞のコラムでも取り上げたので御一読願いたいが、正直言って筆者も良く分からない。穿った見方はできるが、敢えて同コラムに書いたのは、2020年代の中国が1930年代の日本に似ており、日本の軍部のような対米関係改善を快く思わない向きが今の中国にもいる、という仮説である。
もう一つの「オフレコ破り」については、素晴らしい論考がある。元国連広報担当事務次長を務めた赤阪清隆大使の毎日新聞に対する批判的小論だ。要点のみ引用するのでご一読願いたい。
●毎日新聞のオンライン記事では、「岸田政権の中枢で政策立案にかかわる首相秘書官がこうした人権意識を持っていることは重大な問題だと判断した。ただし、(首相秘書官を)実名で報じることは、オフレコという取材対象と記者との約束を破ることになるため、毎日新聞は(首相秘書官に)実名で報道する旨を事前に伝えたうえで、3日午後11時前に記事をニュースサイトに掲載した」と記しています。
●ここで疑問がわきます。毎日新聞からの事前通報に、首相秘書官がどう応じたのかが説明されていません。毎日新聞は、実名で報道する旨を首相秘書官に伝えたということですが、オフレコを解除することについて首相秘書官が同意したとは書かれていません。同秘書官が、同意しなかった、あるいは返答する機会を与えられなかったのであれば、毎日新聞は「オフレコ破り」をしたことになります。そうではなくて、首相秘書官がオフレコを解除することに同意したのであれば、「オフレコ破り」にはなりません。
●仮に、今回のケースが、「オフレコ破り」だったとして、さて議論は、「オフレコであっても、その発言内容が社会的に重大な意味合いを有しており、オフレコを破ることが、より大きな公益にプラスとなる場合はオフレコ破りが許されるのか?」という問題につながります。私自身は、これまで長い間内外のメディアと接してきて、この議論は、国際的には通用しないと思います。
実は筆者も個人的に似たような経験を持っているのだが、この続きは2月13日の週の外交カレンダーに書くことにしよう。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:中国のスパイ気球と疑われるものを撃墜し回収する米海軍(2023年2月10日)出典:Photo by Ryan Seelbach/U.S. Navy via Getty Images
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