中国軍がなぜ日米戦争史を学ぶのか
Japan In-depth / 2023年2月16日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
【まとめ】
・中国人民解放軍が太平洋戦争の歴史を熱心に研究し始めた.
・中国側の動機は、今後起きるかもしれない米中戦争に備えることだと考えられる。
・人民解放軍は米軍との大規模な戦争を考えるうえで、太平洋戦争の教訓を活かそうとするだろう。
最近、中国人民解放軍が日米両国が戦った太平洋戦争の詳細な歴史を熱心に研究し始めたことがアメリカでの調査で明らかとなった。
中国側の動機は、今後太平洋の広大な海域で起きるかもしれない米中戦争に備えることのようだという。日本にとっても深刻な事態となる展望なのだ。
日本側としてはまず、アメリカとの戦争に備えるというような危険な隣国の存在を改めて認識すべきだろう。そのうえで同盟国のアメリカが中国側のそんな危険な動向を十二分に意識して、その対策をも考えているという現実を認識すべきである。
そうした認識はみな、日本自体の国家安全保障や防衛政策へと直結する基本点だといえよう。
アメリカの首都ワシントンに所在する安全保障の大手研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」は1月中旬、「太平洋戦争の中国への教訓」と題する研究報告書を公表した。
副題に「人民解放軍の戦争行動への意味」とあるように、太平洋で日本軍と米軍が戦った際の詳細を中国の今後の軍事行動への教訓にするという中国側の研究内容を調査し、分析していた。
約100ページの同報告書を作成したのはCSBAの上級研究員で中国の軍事動向については全米有数の権威とされるトシ・ヨシハラ氏である。
日系アメリカ人学者のヨシハラ氏は海軍大学教授やランド研究所の研究員を務め、中国人民解放軍の動向を長年、研究してきた。ヨシハラ氏は父親の勤務の関係で台湾で育ったため中国語に精通し、中国側の文書類を読破しての分析で知られている。
では中国はなぜいまになって70数年前に終わった太平洋戦争の歴史を熱心に学ぼうとするのか。ちなみにこの太平洋戦争を大東亜戦争と呼ぶことも適切だろうが、アメリカと日本の軍隊が主戦場としたのはやはり太平洋だった。
ヨシハラ氏は中国側のこの研究の目的について「近年、中国軍関係者による太平洋での日米戦争の研究が激増してきたが、その背景には習近平主席が『人民解放軍を世界一流の軍隊にする』と言明したように、2030年までには中国軍はとくに海軍力で米軍と対等になる展望の下で太平洋の広範な海域での米軍との戦争研究を必要とするようになったという現実があるといえる」と述べている。
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