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米・日への中国人留学生問題

Japan In-depth / 2023年2月20日 7時0分

米・日への中国人留学生問題


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)





【まとめ】


・米国への中国人留学生が激減している。


・中国人留学生による米国内でのスパイ活動が問題となり、ビザ発給条件が厳格化。


・中国人の学生は次善策として日本を目指している。


 


周知の如く、近年、米中関係はぎくしゃくしている。最近、米上空に飛来した「中国偵察気球」問題で、更に両国関係が悪化した。ブリンケン国務長官が訪中し、米中関係改善を模索する直前だったからである。結局、バイデン政権は、直近8日で(「中国偵察気球」1つを含む)4気球を撃墜した。


さて、ここでは、まず、世界で最も人気の高い留学先である米国への中国人留学生“激減”について取り上げたい。未来の米中関係に多大な影響を及ぼす公算が大きいからである。


2022年上半期、米国が中国人留学生に発給した学生ビザ(「F-1」)は前年同期比で3割減少(a)した。米国務省によれば、昨年1~6月の中国人への「F-1」発給件数は3万1055件で、コロナ流行前の19年同期の6万4261件から半減している。


今年(2023年)1月25日、米移民税関捜査局は、留学生等に関する最新データを発表(b)した。その結果、米国で学ぶ留学生の数は再び100万人を突破し、コロナ発生前の水準に近づいていることがわかった。


また、今年1月時点で、「F-1」(プラス「M-1」<専門学生ビザ>)の学生数は108万人に達している。コロナ流行前の2020年の114万人と比べても、わずか5.4%の減少にとどまった。


ただ、主要な留学生を送り出す国側に変化があった。2020年1月と2023年1月の米国への留学生の出身国トップ10の動向を見ると、1位が中国からインドへシフトしつつある。


話が、若干、横道にそれるが、米国の大学院(修士・博士課程)に留学している中国人留学生は約15万人だという。他方、インド人留学生は約22万人(うち修士課程は19万人以上)である。彼らの間では、短期留学して米国で就職を希望する人が多い。


実は、米国で就職を志す留学生の主要なビザプログラムである「H1-B」の発給先は、インド出身者が圧倒的に多く、2021年度の発給率は全体の71%と刮目すべき数字だった。次に、中国が続くが、そのシェアはわずか12.4%とインドの6分の1にも及ばない。


閑話休題。中国人留学生の減少理由だが、トランプ政権は、中国からの留学生による米国内でのスパイ活動の脅威に直面した(d)。そこで、米国の安全保障上、中国人留学生のビザ発給条件を厳格化している。そのため、中国の大学で科学、技術、工学、数学 (STEM)の4つ分野を専攻した卒業生は、米国留学に必要なビザの取得が事実上、ほぼ不可能になったという。


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