中国の脅威への対処法 その7 ODA外交を反省せよ
Japan In-depth / 2023年2月19日 23時0分
ODAには貸付と贈与の両方があるが、貸付も返済条件は商業貸付と異なり、受け手に極端に有利で、国際的基準での「援助」だった。資源ローンも同様に援助だった。ここでは日本政府が対中政策の主眼とみなしたODAについて論じることとする。
対中ODAの第一の目的は日中友好だとされた。当時の大平正芳首相は「友好」を明言した。援助額が大幅に増えた時期の竹下登首相も「中国人民の心へのアピール」を強調していた。
だが中国側一般の日本への態度を良好にするという効果は皆無だった。まず中国政府が自国民に日本からの援助の事実を知らせなかったからだ。私の北京在勤中でも日本のODA資金300億円で建設された北京国際空港ターミナルや同じ200億円で開通した北京地下鉄も大々的な完成式典で貢献団体の名が列挙されながら、日本への言及はゼロだった。中国国民は援助を知らないのだから日本への友好につながるはずがない。
第二の目的は中国の民主化への寄与だったといえる。
日本政府のODAの基本方針をまとめた大綱でも相手国の「民主化の促進」「人権や自由の保障」をうたっていた。この点での失敗はいまの中国の独裁をみれば明白である。
そもそも日本の対中ODAは中国の国民ではなく政府に向けての高速道路、鉄道、空港、発電所、港湾施設などインフラ建設の用途が大部分だった。具体的なプロジェクトはすべて中国側からの要請に応じていた。しかも中国側の国家開発5ヵ年計画に合わせて5年一括の総額供与という世界でも稀な大判振る舞いだった。
一般国民に向けての人道的援助はないに等しかった。民主主義どころか独裁政権の富国強兵策を助ける重要な財源となっていたのだ。
第三には日本のODAには「軍事用途への回避」という基本目的があった。
だが対中援助はこの目的に反するどころか中国の軍拡を助けたのだ。因果関係としてはまずODAが中国政府に軍事費増加への余裕を与えた。中国側が経済開発に不可欠とみなす資金が多ければ、軍事費が制約される。だがその経済開発に日本の援助をあてれば、軍事に回せる資金は増える。
たとえば中国の公式発表の国防費は1981年は167億元、日本円で約2600億円だった。同時期の日本の対中ODA一年分である。だから日本のODAが中国の国防費を補っていたといえるだろう。
次には日本のODAでのインフラ施設が中国の軍事能力の強化に寄与したことである。人民解放軍総後勤部の楊澄宇参謀長は1998年の論文で「戦時には鉄道、自動車道、地下交通路を使っての軍需物資や兵員を運ぶ総合的システムが必要となる」と述べていた。
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