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少子化対策と卵子凍結

Japan In-depth / 2023年2月20日 23時0分

2000年前後で胚凍結のみならず、卵子凍結にも有効な「ガラス化法」という凍結技術が開発され、その後のデータの蓄積により、2013年に米国生殖医学会(ASRM)が卵子凍結保存技術は、もはや臨床研究ではなく、治療である、とのガイドラインを発表したのです2)。特に、がん治療などの副作用によって卵巣の機能が廃絶してしまうことが予想される患者さんには、その治療前にこの方法についてのカウンセリングを行うべきとされました。





この「がん生殖医療」については我が国でも助成金制度ができておりますし、専門学会も立ち上がっております。がん治療のための化学療法や放射線治療によって、卵巣機能を失ってしまうとその後ご自身の卵子での妊娠は不可能となるわけですから、少しでも可能性を残しておく、という医療行為が重要と考えられているのです。





さて、冒頭の東京都が助成する卵子凍結ですが、上記のがんなどの「医原性」の卵子凍結とは異なるため、「社会性」卵子凍結と呼ばれることが多いです。





病気などにより卵巣機能を失ってしまい、妊娠の可能性がほぼ0となってしまう「医原性」に比べ、個人差も大きい加齢による妊孕性低下に「備える」という目的であるためか、海外での報告では卵子凍結を行う理由としてキャリアアップを考える女性が多く、さらに凍結卵子を使用しない女性も多いと言われ、専門学会でも賛否両論あり、日本産科婦人科学会では健康な女性の卵子凍結については推奨しない、としています。





ある報告によれば、36歳くらいまでなら、20個ほどの凍結で将来8割ほどの出産が見込めるとされている反面、40歳を超えると同じ20個でも5割以下まで低下してしまうとされていますし3)、年齢が高くなれば、一度に獲得できる個数も減ってしまうのです。





さらに将来凍結された卵子を使用する場合は、相手の精子が必要となりますが、男性の老化についても気をつける必要があります。高齢妊娠のリスクも考えておかなければなりませんし、卵子を獲得するための「採卵手術」は保険適用となった体外受精においても、手術の範疇として考えられており、ある程度のリスクがある医療行為として認識しなければなりません。





ただ、小規模の研究ではありましたが、東京都に先行して卵子凍結助成を行った浦安市での研究においては、その有効性と限界について事前にしっかりとご説明し、ご理解いただいたうえでも、様々な理由で卵子凍結を希望される方がいらっしゃることが分かりました。





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