東大コロナ留年ーこれまでの経緯のまとめー
Japan In-depth / 2023年2月21日 11時0分
金田侑大(北海道大学医学部)
【まとめ】
・1月26日高裁が杉浦氏の訴えの審理を地裁に差し戻すことを決定。
・東大コロナ留年問題は、コロナ関連で生じた多くの問題の氷山の一角。
・杉浦さんの問題に向き合うことは、コロナ対策と機会保証の問題を問い直す第一歩。
“東大コロナ留年訴訟、差し戻し 学生の訴え却下した一審判決を東京高裁が破棄”
大見出しとして書かれた上の文字をネットニュースで目にしたとき、ようやくか、と、私は胸をなでおろす思いであった。
昨年8月、東京大学教養学部理科3類に在籍する杉浦蒼大さんが、コロナ感染により授業を受けられなかった際、補講が認められなかったために単位が不認定となったことで、東大を相手に訴訟を起こすまでに陥ったこの問題に、ようやく進展の兆しが見え始めた。ここに、これまでの経緯を簡単にまとめる。
杉浦さんは、昨年5月、コロナに感染した。基礎生命科学実験という必修科目において、熱や頭痛といった症状が酷かったため、その日に欠席連絡を行うことができず、5/17,24日の授業を欠席した。症状改善後、25日に規定より遅れて欠席連絡を行い、24日開講分に関しては受理された一方で、17日開講分に関しては受理されず、その後も診断書すら受け取られないまま補講対応が認められなかった。なお、当該科目の規定では、欠席当日の朝11時までの連絡が必要だとされていた。
そして、同年7月に発表された"不可"という成績結果を見て、コロナで欠席した分の補講をしてほしいと、杉浦さんは異議申し立てを行った。すると、基礎生命科学実験の成績が17点減点され、その上で、「補講に関わらず単位不認定である」と東大からの返答があった。しかしながら、17点の減点理由に関しては、1か月半以上、東大から十分な説明が得られなかった。
そのため、杉浦さんは8月に文部科学省にて会見を開き、東大に減点理由の説明と、補講対応を要求した。すると翌日、東大から報道への抗議文が公開され、「欠席当日の夕方に大学のサイトにアクセスした形跡があり、コロナ感染による重篤な症状があったとは認めがたい」との主張が表明された。加えて、減点の理由は教員による成績入力ミスであったことが、後日メディアからの取材で初めて明かされた。
結果として、杉浦さんは他の科目では補講が認められた一方で、当該科目の単位が取得できないまま、降年(他大学の留年に相当する)を言いわたされることとなった。そして、「過失がないのに教育機会を奪われた」として、降年の処分等の取消し、名誉毀損の損害賠償を求め東大を提訴するという事態に陥っている。
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