米国共産党には入らないという習近平氏
Japan In-depth / 2023年2月21日 23時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・習近平氏は「自分がもし米国に生まれていたら、米国の共産党には入らないだろう。」と語った。
・アメリカの運動体「Black Lives Matter」は、一種の共産党というべき側面がある。
・極左の側においては共産革命を目指しつつも共産党は名乗らず「差別に抗議する」団体という衣装をまとうのが戦術。
安倍晋三回顧録に、「自分がもし米国に生まれていたら、米国の共産党には入らないだろう。民主党か共和党に入党する」という習近平中国共産党総書記の言葉が引かれている。国家権力掌握に執念を燃やす者としては当然だろう。
「つまり、政治的な影響力を行使できない政党では意味がないんだ、ということです」と安倍首相は解説している。
アメリカの「黒人の命は大事」(Black Lives Matter 以下BLM)という運動体は人種偏見と闘う人権NGOを標榜するが、一種の共産党というべき側面がある。現に、共同創設者の黒人女性パトリッセ・カラーズは「我々は訓練されたマルクス主義者である」と公言してきた(カラーズ自身はその後、資金流用疑惑から辞任)。
共産革命やマルクス主義を露骨に掲げれば、アメリカでは勢力を得られない。実際、一応歴史のある米国共産党が存在するが泡沫政党の域を出ない。BLMも黒人マルクス主義団体と見られていた頃は、資金が集まらなかった。
アメリカには、共産党を非合法化すると同時に共産主義活動組織への参加、支援を禁ずる「共産主義者統制法」(1954年)がある。ただしこの法には、連邦地裁レベルで違憲判決が出ており、最高裁はいまだ憲法判断を下していないものの実際には「死法」に近い。
興味深いことに、この法律を熱心に推進したのは、ジョン・F・ケネディ上院議員(当時)を含む民主党のリベラル派だった。
当時はまだ「赤狩り」の異名で知られるマッカーシー旋風が終息していなかった。特に左派系議員は「シロ」をアピールするため、また批判を「共産党」や「公然共産主義者」に集中させるため、積極的に動く必要を感じていたのである。
第二次大戦の英雄で、アイゼンハワー大統領(当時)の上官だったマーシャル元帥(戦後、国務長官、国防長官)を標的にするなど無謀な形で敵を増やしたジョゼフ・マッカーシー上院議員が、上院で問責決議を通されたのはその年の年末、1954年12月のことだった。
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