ウクライナへの軍事支援に思う(上)オワコン列伝 その5
Japan In-depth / 2023年2月27日 18時0分
しかし西側の戦車には、一部の例外を除いて自動装填装置がなく、装填手を訓練する必要がある。また故障などの結果、ロシア側に鹵獲されたりすれば、貴重な機密が漏れてしまう。
以上を要するに、このタイミングでの供与は、ウクライナが大量の新型戦車を投入した場合、ロシア側には、これを打ち破る力は残されていない可能性が高い、との判断だろう。
さらに言うなら、NATO諸国において「戦車はオワコン」と考える風潮は、今や無視できないものになってきている。
たとえば米国海兵隊は、戦車大隊を廃止してしまったし、オランダ陸軍に至っては戦車部隊そのものが廃止されようとしている。
一方で、ウクライナと、今やロシアの数少ない同盟国であるベラルーシと国境を接するポーランドは、ロシアの機甲戦力は未だ脅威であると考え、韓国製K2戦車を、ライセンス生産分も含めて1000輛も調達すると発表した。
米国海兵隊が戦車大隊を廃止したと述べたが、これはもっぱら緊急展開能力との兼ね合いで、ゲリラや民兵相手に有効な、重量30トン程度の軽戦車の開発もすでに始めている。
K2戦車に話を戻すと、アジアで開発された戦車としては初めてヨーロッパで採用されたことになるが、その理由もまた、重量55tと同世代の戦車の中では軽量で、水深4メートルの河川を潜水徒渉出来る能力もあり、ポーランド東部の地形やインフラに適合しているからであったと聞く。
つまり、戦車が今も「陸戦の王者」なのか「オワコン兵器」なのかという判断は、地形や予測される脅威の形態、その脅威に対抗する戦略によって変わってくるに過ぎない。それを言い出すと、あらゆる兵器が基本的に同じなのだが。
わが国の場合はと言うと、戦車がオワコンだとは言い切れないまでも、巨額の税金を投じて多数を揃える必要性があるか、疑問である。少なくとも、優先順位はあまり高くないと断言できる。
これは私や清谷信一氏が、これまで色々なところで述べてきたことで、日本列島のように長い海岸線を持つ国土の防衛を戦車に頼ろうとすれば、膨大な数を揃えなければならなくなり、必ず無理が生じる、という問題がひとつ。
わが国と同様、長い海岸線を持つイタリアは、時速100キロ以上で機動できる装輪装甲車に力を入れている。最新のチェンタウロ2というモデルは、8輪駆動の車体にK2を含む西側第三世代の戦車と同等の120ミリ砲を装備し、世界を驚かせた。ちなみにロシアも、多数の装輪装甲車を開発しているが、イタリア製の高性能ぶりに着目してライセンス生産に乗り出し、すでに一部はウクライナ近郊に姿を見せたと聞く。
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