ウクライナへの軍事支援に思う(下)オワコン列伝 その6
Japan In-depth / 2023年2月28日 11時0分
今や宇宙空間にある衛星を介して、インターネットで情報がやりとりできる時代で、言い換えれば地上の通信網が壊滅しても、ただちに全軍の致命傷とはならないのだ。
実際問題として、米軍が前述の指揮通信システムを肩代わりし、ウクライナ軍は効果的な防衛戦闘を継続できた。一方ロシア側はと言えば、なにも知らない観光客が地対空ミサイルを背景に「自撮り」した写真をネットに上げたことにより、配備した場所が露見する、とい事態に見舞われている。これはネット社会に対する理解度の差と言う他はない。
戦略の問題について、もうひとつ述べると、かつてプロイセンの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツは、著書『戦争論』の中で、
「戦争能力とは戦力(資材および人員)と、意志の強さの積である」
と述べた。
これ自体は今も通用する考え方なのだろうが、現代の戦争においては、さらにふたつの要素を付け加えなければならないだろう。
ひとつは、資材と人員を戦争目的のために効果的に動員するマネジメント能力、いまひとつは、国内外の世論を味方につけるプロパガンダ能力である。
ヴェトナム戦争における米軍が格好の例で、戦闘資材では圧倒的に勝っていたにもかかわらず、史上最も不人気な戦争と呼ばれる事態を招いてしまったことから、敗北の汚名に甘んじることとなった。
旧ソ連邦も、アフガニスタン戦争において、国際世論の支持を得られない戦争がどういう結果を招くか、多大な犠牲を払って学んだはずなのだが、プーチン大統領には、その教訓が伝承されていなかったらしい。
もっとも、今でもロシア市民の7割近くは侵攻継続を支持しているそうであるし、やはり3月のシリーズでご登場願った、日本において戦争反対を訴え続けているロシア人も、
「NATOが供与した兵器で苦戦を強いられているだけで、最後の勝利は自分たちのもの、と素朴に信じている人は未だに結構多いですよ」
と教えてくれた。
つまり、国内世論を戦争支持でまとめ上げるプロパガンダの点では、プーチンの強気な姿勢も、あながち根拠のない自信と決めつけることもできないようだ。だからこそ厄介なのだが。
もっともこの問題については。NATOもはっきり言って「同じ穴のムジナ」に近い。
NATO諸国が開発製造した対戦車ミサイルや地対空ミサイルが大いなる戦果を上げたことから、わが国にも売って欲しい、という引き合いが殺到し、これら軍需産業に関わる企業の株は軒並み高騰した。
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